瀬戸際の暇人

もう台風は勘弁…

魔女の瞳はにゃんこの目・3 その3

2010年07月31日 15時01分12秒 | 魔女にゃん(ワンピ長編)
その2へ戻】






話が纏まった所で、フランキーは全員に茶でも飲んでけと誘いました。
しかし降りが激しくなるのを恐れた村長は、彼の招待を丁寧に断り、ウソップを宜しく頼んだ後、マキノ達を連れて帰路に着きました。
『パーティーズ・カフェ』前での別れ際、マキノは村長に何度も礼を述べ、村長は雪のせいで2、3日珈琲を飲みに行けなくなる事を大層残念がりました。
積る雪が膝の高さを越える頃、外に居るのはルフィゾロナミマキノの4人だけとなりました。

ナミが白い息と共に、低く短い呪文を吐きます。
すると忽ち彼女の茶色かった瞳は、闇夜にキラキラ輝く金色に変化しました。
提げてたランプを消し、替って大きな古箒を出現させます。
1回転させ、右手に持ち替えた所で、ナミは空を見上げました。

真っ暗な空を背景に、白い螺旋を描いて落ちる雪が、これから吹雪になる事を彼女に教えます。

「ルフィ!ゾロ!延ばしてばかりで悪いけど、地図を持って来る件は明後日にさせて頂戴!マキノ!貸して貰ったコートも、その時返すわ!」

振向いたナミは、白い毛織のコートを抓みながらマキノに礼を述べ、ルフィとゾロに明後日の仕切り直しを約束してから、箒に跨りました。

「待って!」

ところが飛行の呪文を唱える寸でで、マキノに引き止められてしまいました。
驚いて振り返ったナミの両肩に、マキノの手が優しく置かれます。
自分を見上げる目線と合うと、彼女はにっこり微笑んで言いました。

「これから吹雪になるんでしょう?なら今夜は家に泊まって行きなさい!」

マキノの背後で彼女の言葉を聞いたルフィとゾロが直ぐに賛成します。

「そうだナミ!マキノの言う通り家に泊まってけ!遠慮はいらねーぞ!」
「疾うに道はかなりの雪が積ってて、今から帰るには危険だしな…俺も泊めて貰って良いか?マキノ」
「ええ、構わないわ!ルフィと一緒に居る事は、ゾロの家でも承知してるんでしょ?なら心配してないだろうし」
「今夜は皆で宴だな♪♪」
「ちょ、ちょっと待ってよ!私、此処に泊まってく訳にはいかないわ!」

承諾もしてない内に、早お泊りして行くと決め付け、大いにはしゃぐ3人に、ナミは慌てて断りを口にします。

「なんだよ!?せっかく盛り上がってんのに水をさすなよな!」
「吹雪に閉じ込められてる間、3人でシャンクスの資料室を片付けりゃ、時間を有効に活用出来るだろ」
「本当に遠慮する必要なんて無いのよ?1日や2日位、ルフィの分から少し都合して、ナミちゃんの分の食事に充てるから!」
「ええ!?俺の分から取るのか!?そりゃひでーよマキノ!!」
「別に遠慮してんじゃなくて!!…早く帰らなきゃ私のオレンジの森が大変な事になるんだってば!!」



ナミの住むオレンジの森は、彼女の魔法の力で1年中初夏の陽気に包まれています。
外界の様に四季は無く、地面が乾かない限り雨が降る事も有りません。
青空の下、樹々は瑞々しい葉を繁らせ、オレンジをたわわに実らせていました。
オレンジは毎朝収穫され、使い魔によって外界に売りに出されます。
もいだ後、樹は一晩で新しい実を熟す為、魔女の懐は毎日潤っていました。



「つまり毎朝収穫しないと、生っては熟し生っては熟し…枝から落ちたオレンジに森が埋め尽くされてしまうのよ!それでなくても此処数日留守にしたってのに、悠長に泊まってなんか居られないわ!」
「だから放っぽって鳥の餌にでもしろって」
「人の貴重な収入源を何だと思ってんのよあんたはァァ!!!」
「なら落ちたオレンジここへ持って来いよ!俺が全部食ってやる!」
「只であんたにあげる義理が何処に有る!!?」

2人のほほんと挙げる解決策を、ナミが片っ端から却下します。
そこへマキノが名案を思い付いたとばかりに、声を弾ませて話の輪に加わりました。

「そうだわ!落ちたオレンジをこの村の皆で買えば良いんじゃないかしら!?」
「止めとけマキノ!こいつのオレンジは1個730ベリーもするっつう、大層あこぎな――ブッ!!」
「あこぎとは何だ!?高級ブランドなんだから当り前でしょお!!」

価格にケチを付けたゾロの頬に、ナミの強烈な平手打ちがお見舞いされました。
1個730ベリーもすると聞いて、マキノの表情はみるみる曇りました。

「まァ、そんなに高いんじゃ手が出せないわ。私とナミちゃんの仲に免じて、せめて半額に負けて貰えないかしら?」
「そうだそうだ!他人じゃねーんだから只にまけろ!」

手が出せないと言いつつ、マキノの態度からは諦めが見えません。
流石はルフィの保護者、血の繋がりは無い筈なのに、一緒に騒ぐ少年とマキノは、目や髪の色だけでなく性根まで、不思議に似て思えます。
邪気無く「負けろ」と言うんだから性質が悪い…。

「…落ちて傷付いたオレンジを市場に出したら信頼ガタ落ちしちゃうし、特別に9割引で売ったげるわよ!」

根負けしたナミは、わざと重々しい溜息を吐いてみせて、そう約束しました。
途端にルフィが勝利の雄叫びを上げ、ゾロがくっくと忍び笑います。
2人を睨むナミをマキノはギュッと抱き締め、無邪気に礼を述べましたが、急に神妙な顔付に変ったかと思うと、彼女の金色の瞳を覗き込んで言いました。

「実はシャンクスの件で聞いて貰いたい話が有るの…」




店に入ったマキノは、3人をカウンター席に案内し、後ろの暖炉に火を熾しました。
暫く経つと火は勢いを増し、冷えた空気が次第に暖まって行くのを感じました。
赤々と燃える炭がパチパチ爆ぜて、薄暗い店内を照らします。
マキノはカウンターの下から両手鍋を取り出すと、半分位の嵩までミルクを入れて、暖炉に掛けました。
沸騰し、表面に薄い膜が張った所で、カウンターに並べて置いた4つのカップに、均等に注ぎます。

「寝る前だから、珈琲じゃなくって、ホットミルクねv」

花柄の木製カップを3人に配りながら、マキノが言いました。
そうして彼女自身も己に用意したミルクを口に含みます。

冷え切っていた体を全員が充分に温めた所で、彼女は2階の自室から抱えて来た束を、3人の目の前に積みました。
束を結わえていた紐を解きます。
山積みになったそれは手紙で、全て同じ差出人からの物でした。

「…アイスバーグ?」

束から1枚抜き出し手に取ったナミが、差出人の名前を読上げます。

「シャンクスの捜索をして下さってる、港街の市長さんよ」

目で問われたマキノが答えた途端、ナミの左右に座るルフィとゾロが反応し、素早く手紙を掴み取りました。
バランスを崩した束が崩れ、テーブル下にまで零れ落ちます。
それには構わず2人の少年は…特にルフィは、開封してある手紙を次々取り出しては広げ、目を皿の様にして黙読しました。
手紙は難しい言葉で書かれていて、ルフィにはチンプンカンプンな内容でしたが、シャンクスの行方について記した調査報告である事だけは解りました。
日付から判断するに、手紙は週1のペースでマキノに届けられているようでした。

「現在シャンクス達の捜索には、2つのチームが当たってくれているわ」

床に落ちた手紙を拾い上げながら、マキノが説明します。
ナミは文に目を走らせつつ、彼女の話に耳を澄ませました。

「1つは国の警察が派遣している捜索隊で、もう1つはそのアイスバーグさんが私的に出している捜索隊…噂では他にも幾つか動いてるチームが在るらしいけど」
「有名人だもの。不思議じゃないわね」

ナミが相槌を打って話を促します。

「シャンクスはアイスバーグさんの街の創生から関っていて、見付けた宝の殆どを彼の街の博物館に寄贈しているの。
アイスバーグさんの方でも、シャンクスの為に研究所を設立したり、彼の冒険に掛かる資金を調達したりしてくれてるわ。
言うなればシャンクスのスポンサー、大事な協力者ね」
「どうりで此処には財宝の影も形も見当たらない筈だわ」

前にルフィから見せられた、部屋を埋め尽くす資料の山を思い出して、ナミが溜息を吐きます。
カップから立ち昇る湯気が、吐き出した息に煽られ、拡散しました。

「1年前、シャンクスが行方不明になった知らせを受けて、アイスバーグさんは直ぐに捜索隊を出してくれたわ」
「それから週1のペースで、アイスバーグさんから報告の手紙が届くようになったのね?」
「ええ、そうよ」

マキノがカウンターに頬杖を着いて頷きます。

「けどあまり捗ってる様には思えないわ。手紙が段々薄くなってってるもの」
「ええ、そうね」

古い手紙と新しい手紙を並べて厚みを較べるナミに、マキノは続けて肯定の頷きを返しました。

突然――バンッ!!と勢い良くテーブルが叩かれ、ルフィが物凄い剣幕で吼えました。

「マキノ!!何で今まで俺に隠してた!?」

下を向いていた全員の視線が、椅子の上に膝立ちするルフィに集まります。
暖炉の火を反射して爛々と光る黒い瞳に向い、マキノは哀しみを含んだ笑顔で答えました。

「…教えたら直ぐにアイスバーグさんを訪ねて、行方を追おうとしたでしょ?嫌よ、私、シャンクスに続いて、ルフィまで居なくなるなんて……」

声は段々と小さくなり、顔を覆った手の中で聞えなくなりました。

「だったら何故今になって話すんだ?」

マキノの言葉に意気を殺がれ、大人しく座り直したルフィに代り、ゾロが質問を投げます。
問われたマキノは俯けていた顔を上げて答えました。

「『ナミちゃん』という翼を得た今、貴方達は止ろうとしないでしょう?…だから覚悟して話したの」

全てを打ち明けた後、マキノはナミの目を真直ぐ見て頼みました。

「ねェ、ナミちゃん!鉄砲玉みたいな2人だけど、見失わないように付いて行って頂戴!」

「…なんで私がこいつらのお守りを」

目を逸らして零したナミに、透かさずルフィとゾロが反撃します。

「婆さんの面倒を見る若者の苦労も察して欲しいね!」
「毎回ピンチを救ってやってんのになー!」
「負ぶってやったり、我ながら健気で泣けて来るぜ!」
「あんまりうるせーと合わせ鏡して閉じ込めっぞ、金目ババァ!」
「婆ァ婆ァ煩いのよガキ!!悪口言うにもも少し語彙増やしたらどうなの!?」
「「オールドミス!!」」
「なんだとー!!」
「はい、そこまでー!」

お定まりの口喧嘩の幕が切って落とされる前に、マキノが手を打って治めます。
振向いた3つの顔を笑顔で見回した彼女は、今後為すべき事を言聞かせました。

「吹雪が止んだら、私の手紙を持って、アイスバーグさんを訪ねなさい。きっとシャンクス達の足取りを纏めた、大きな地図を持ってると思うわ!」




【続】

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