前回の続きで、書いてる本人もよく解らん物語風バトン回答。(汗)
済みませんが本日もお付き合い宜しく。
チビナミさんから所望を受けた私は、彼女の為にベッドを拵えてあげる事にした。
幸いにも家はクリスチャンで、キリ○ト様を祀る小さな祭壇を設けている。
祭壇の中には眠れる幼子キリ○トのクリブを飾っていた。
恐れ多くも私は、箱型のベッドで安からかに眠る像と、下に敷いてあった藁を退かし、代わりにカット綿を重ねて敷いて、彼女のベッドにしようとしたのである。
仮にも信者として全く心が痛まなかった訳ではないが、ナミさんとキリ○ト様を己の心中で天秤にかけたなら、ナミさんが勝ってしまう。
自己犠牲の精神を解かれて天に召された方だ…きっと解って下さるに違いない。(←身勝手)
カット綿はホテルに泊る度に貰ってくるので、大量に有った。
それを隙間が出来ない様、煉瓦を積む要領で重ねてく。
箱いっぱい詰め終わった所で、タオル地のハンカチをシーツ代わりに、二重にして覆う。
指で押すと中々の弾力、寝心地好さげなベッドが出来上がった。
枕はやはり数枚のカット綿を重ねて丸め、布ハンカチで包んで縫って、可愛くキャンディ型に拵える。
特に厚手で触り心地の好いハンカチを掛け布団にして、チビナミさん専用のベッドは完成した。
ナミさんが両手で沈み具合を確かめる。
幾度が繰り返した後、私の方を振り向き、笑顔でOKを出してくれた。
「うん!これなら好く眠れそうだわ!有難う!」
良かった…喜んで貰えて。
苦労した甲斐が有ったというものだ。
ナミさんがベッドに身を横たえる。
掛け布団に包まると、直ぐに瞼を閉じて、寝入ってしまった。
耳を澄ませば、とてもとても小さな寝息が聞こえて来る。
彼女が安らかに眠れる様に、私は照明を落として、続く間に引っ込もうとした。
と、その時だ――
■ぐっすり眠っている「ナミ」。どんな寝言を言ってると思う?
「…ベルメールさん…!」
彼女が突然、寝言を漏らした。
驚いてベッドの中を覗き込む。
眠る彼女の目元には涙が浮かび、掛け布団を握る手には力が入って見えた。
――水をあげた人がイメージした通りの人間に育つ。
だからって律儀に記憶まで植付けなくてもいいのに…。
私がイメージしたせいで、辛い過去まで背負って生まれてしまったのだ。
彼女に対して済まない気持ちで胸がいっぱいになる。
慰める積りで彼女の頭をそっと人差し指で撫でた。
力を入れて起こさない様に、潰さない様に、優しく注意深く。
■やっと起きた「ナミ」は、寝呆けているのか、貴女に抱き付いてきました。どうする?
その指にナミさんがいきなり、ぎゅうと抱き付いて来た。
いやこの場合「しがみ付いて来た」と表現した方が、正しいかもしれないが。
それは兎も角、あんまり必死に思えたものだから、引っ込めるのも憚られた。
暫くそのまま差し出したままで居た所、私の影の気配に気が付いたのだろう。
ナミさんがゆっくりと瞼を開けて起上がった。
■「ナミ」は、寝呆けて抱き付いてしまった事をお詫びに何でも言う事を一つ聞いてくれるそうです。どうする?
「ゴメン…なんか…寝ぼけてたみたい…」
目を覚ました彼女は、私の指に抱き付いたと言うか、しがみ付いてしまった事を、恥ずかしそうに詫びた。
「いやいやそんな!…むしろ嬉しかったと言うか、いっそそのまま居て欲しかったと言うか…あ、いやいや!」
つい本音が飛び出しそうになり、慌てて口の中に言葉を押し込める。
そんな私をナミさんが怪訝そうに見上げた。
ベッドから抜け出た彼女が、私の正面までやって来る。
話をしたそうな気配を掴んだ私は、なるべく頭を低くして座り、じっと黙って待った。
もじもじと言い難そうにしていたが、意を決した様に口を開く。
「……やっぱり私、少しおかしいかもしれない…。
経験した筈の無い記憶が、頭の中にいっぱい浮かんで来るの」
「……………………。」
「…とても悲しくて…嬉しくて…長い夢を見たわ…。
私には血の繋がらない母親と姉が居て、3人1つ家でずっと楽しく暮らして居たの。
血は繋がってなくても、私を心から愛してくれる、素敵な母と姉だった。
けれど或る日、鮫に似た恐ろしい男に、その母が殺されてしまうの。
それどころか私の居た村まで制圧されてしまうのよ。
大好きな皆の居る村を取り戻したくて、私は独り海に出て泥棒に精を出すんだけど…
その内に仲間と巡り逢うの。
出会った仲間はどうしょもない馬鹿ばっかだったけど、とっても強くて頼りになる、気持ちの優しい奴らだった。
一緒に戦う事を誓ってくれて…鮫男を倒し、村と私を解放してくれたのよ。
そして今度は、その仲間と一緒に、私は海に出たの。
仲間はどんどん増えてったわ。
辛い戦いにも遭ったけど、毎日とっても楽しかった。
…ねえ、これ、どう思う?
私やっぱり、頭が少しおかしいわよねえ?」
不安そうに見上げる彼女に、私はどう説明したもんか頭を悩ませた。
「……ナミさん…それはアレですよ……
『前世の記憶』みたいなもので…」
「…『前世の記憶』?」
「そういうものだと考えて…今の貴女が経験した記憶ではなく…ええ~と何て言うか…」
「……そうよね…だって私は独りきりで生まれたんだもの…。
家族や仲間なんて居っこない…」
「――居ますよ!!」
寂しく俯いた彼女に向い、思わず強く叫ぶ。
いきなり大声で返された彼女は、びっくりして目を真ん丸に見開いた。
「居ます!!居るんです!!
貴女は独りなんかじゃない!!!」
そう、独りになんてさせやしない。
だってこれから――
暑苦しく主張する私に対し、彼女は優しく微笑んでみせた。
最初に出会った時の様に、礼儀正しくちょこんとお辞儀する。
「…有難う!
名付け親であるあんたに、すっかり甘えて世話になっちゃったわね。
お礼と言うか、お詫びに1つだけ願いを聞いてあげるから、言ってくれる?」
「願い??」
「『ナンダラコラの根っ子』は、自分の名付け親の願いを1つだけ叶える決まりなの。
聞いたら再び土に戻って眠る生き物なのよ」
「ええー!?折角出て来たのに、また戻っちゃうの!?
何で!?どうして!!?」
「だって根っ子だもの…土に戻らなきゃ、10日で萎びちゃうわ」
「それにしたって暗い土中に独りきりで生きなきゃならないの!?
そんな寂しい一生あんまりじゃない!!」
恐ろしく孤独な人生(?)を、彼女は当然の如く冷静に話してみせる。
しかし納得のいかない私は、しつこく食い下がった。
「ずっと土中で暮らしてかなきゃいけない訳じゃないわ。
ただ生まれてから半年間は、土の中で栄養を蓄える必要が有るの。
蓄えた後は土から出て、自由に生きられる」
今から半年間って事は……1ヶ月…2ヶ月…3ヶ月……………6ヶ月目には丁度4月だ!
指折り数えて答を出した私は、息が弾むのも隠さずナミさんに尋ねた。
「10日で萎びるなら…まだ土に返らなくても大丈夫って事だよね!?」
「え?ええ、まぁ…」
「だったら3日後、一緒に来て欲しい!!
是非ナミさんを連れて行きたい場所が在るんです!!
私の願いはそれにして下さい!!」
強く懇願する私の様を見て、呆気に取られたナミさんが素直に頷く。
そうして3日後――私はナミさんを連れ、飛行機に乗って南を目指した。
【その4に続】
…気分はすっかり季節外れのナミ誕である。
すいませんが後1回…いや今度こそ次回で終らせますんで。(汗)
記事上の写真は某店のハロウィン飾り。
最近は何処の店でも普通にハロウィンを祝う様になりましたな~。
済みませんが本日もお付き合い宜しく。
チビナミさんから所望を受けた私は、彼女の為にベッドを拵えてあげる事にした。
幸いにも家はクリスチャンで、キリ○ト様を祀る小さな祭壇を設けている。
祭壇の中には眠れる幼子キリ○トのクリブを飾っていた。
恐れ多くも私は、箱型のベッドで安からかに眠る像と、下に敷いてあった藁を退かし、代わりにカット綿を重ねて敷いて、彼女のベッドにしようとしたのである。
仮にも信者として全く心が痛まなかった訳ではないが、ナミさんとキリ○ト様を己の心中で天秤にかけたなら、ナミさんが勝ってしまう。
自己犠牲の精神を解かれて天に召された方だ…きっと解って下さるに違いない。(←身勝手)
カット綿はホテルに泊る度に貰ってくるので、大量に有った。
それを隙間が出来ない様、煉瓦を積む要領で重ねてく。
箱いっぱい詰め終わった所で、タオル地のハンカチをシーツ代わりに、二重にして覆う。
指で押すと中々の弾力、寝心地好さげなベッドが出来上がった。
枕はやはり数枚のカット綿を重ねて丸め、布ハンカチで包んで縫って、可愛くキャンディ型に拵える。
特に厚手で触り心地の好いハンカチを掛け布団にして、チビナミさん専用のベッドは完成した。
ナミさんが両手で沈み具合を確かめる。
幾度が繰り返した後、私の方を振り向き、笑顔でOKを出してくれた。
「うん!これなら好く眠れそうだわ!有難う!」
良かった…喜んで貰えて。
苦労した甲斐が有ったというものだ。
ナミさんがベッドに身を横たえる。
掛け布団に包まると、直ぐに瞼を閉じて、寝入ってしまった。
耳を澄ませば、とてもとても小さな寝息が聞こえて来る。
彼女が安らかに眠れる様に、私は照明を落として、続く間に引っ込もうとした。
と、その時だ――
■ぐっすり眠っている「ナミ」。どんな寝言を言ってると思う?
「…ベルメールさん…!」
彼女が突然、寝言を漏らした。
驚いてベッドの中を覗き込む。
眠る彼女の目元には涙が浮かび、掛け布団を握る手には力が入って見えた。
――水をあげた人がイメージした通りの人間に育つ。
だからって律儀に記憶まで植付けなくてもいいのに…。
私がイメージしたせいで、辛い過去まで背負って生まれてしまったのだ。
彼女に対して済まない気持ちで胸がいっぱいになる。
慰める積りで彼女の頭をそっと人差し指で撫でた。
力を入れて起こさない様に、潰さない様に、優しく注意深く。
■やっと起きた「ナミ」は、寝呆けているのか、貴女に抱き付いてきました。どうする?
その指にナミさんがいきなり、ぎゅうと抱き付いて来た。
いやこの場合「しがみ付いて来た」と表現した方が、正しいかもしれないが。
それは兎も角、あんまり必死に思えたものだから、引っ込めるのも憚られた。
暫くそのまま差し出したままで居た所、私の影の気配に気が付いたのだろう。
ナミさんがゆっくりと瞼を開けて起上がった。
■「ナミ」は、寝呆けて抱き付いてしまった事をお詫びに何でも言う事を一つ聞いてくれるそうです。どうする?
「ゴメン…なんか…寝ぼけてたみたい…」
目を覚ました彼女は、私の指に抱き付いたと言うか、しがみ付いてしまった事を、恥ずかしそうに詫びた。
「いやいやそんな!…むしろ嬉しかったと言うか、いっそそのまま居て欲しかったと言うか…あ、いやいや!」
つい本音が飛び出しそうになり、慌てて口の中に言葉を押し込める。
そんな私をナミさんが怪訝そうに見上げた。
ベッドから抜け出た彼女が、私の正面までやって来る。
話をしたそうな気配を掴んだ私は、なるべく頭を低くして座り、じっと黙って待った。
もじもじと言い難そうにしていたが、意を決した様に口を開く。
「……やっぱり私、少しおかしいかもしれない…。
経験した筈の無い記憶が、頭の中にいっぱい浮かんで来るの」
「……………………。」
「…とても悲しくて…嬉しくて…長い夢を見たわ…。
私には血の繋がらない母親と姉が居て、3人1つ家でずっと楽しく暮らして居たの。
血は繋がってなくても、私を心から愛してくれる、素敵な母と姉だった。
けれど或る日、鮫に似た恐ろしい男に、その母が殺されてしまうの。
それどころか私の居た村まで制圧されてしまうのよ。
大好きな皆の居る村を取り戻したくて、私は独り海に出て泥棒に精を出すんだけど…
その内に仲間と巡り逢うの。
出会った仲間はどうしょもない馬鹿ばっかだったけど、とっても強くて頼りになる、気持ちの優しい奴らだった。
一緒に戦う事を誓ってくれて…鮫男を倒し、村と私を解放してくれたのよ。
そして今度は、その仲間と一緒に、私は海に出たの。
仲間はどんどん増えてったわ。
辛い戦いにも遭ったけど、毎日とっても楽しかった。
…ねえ、これ、どう思う?
私やっぱり、頭が少しおかしいわよねえ?」
不安そうに見上げる彼女に、私はどう説明したもんか頭を悩ませた。
「……ナミさん…それはアレですよ……
『前世の記憶』みたいなもので…」
「…『前世の記憶』?」
「そういうものだと考えて…今の貴女が経験した記憶ではなく…ええ~と何て言うか…」
「……そうよね…だって私は独りきりで生まれたんだもの…。
家族や仲間なんて居っこない…」
「――居ますよ!!」
寂しく俯いた彼女に向い、思わず強く叫ぶ。
いきなり大声で返された彼女は、びっくりして目を真ん丸に見開いた。
「居ます!!居るんです!!
貴女は独りなんかじゃない!!!」
そう、独りになんてさせやしない。
だってこれから――
暑苦しく主張する私に対し、彼女は優しく微笑んでみせた。
最初に出会った時の様に、礼儀正しくちょこんとお辞儀する。
「…有難う!
名付け親であるあんたに、すっかり甘えて世話になっちゃったわね。
お礼と言うか、お詫びに1つだけ願いを聞いてあげるから、言ってくれる?」
「願い??」
「『ナンダラコラの根っ子』は、自分の名付け親の願いを1つだけ叶える決まりなの。
聞いたら再び土に戻って眠る生き物なのよ」
「ええー!?折角出て来たのに、また戻っちゃうの!?
何で!?どうして!!?」
「だって根っ子だもの…土に戻らなきゃ、10日で萎びちゃうわ」
「それにしたって暗い土中に独りきりで生きなきゃならないの!?
そんな寂しい一生あんまりじゃない!!」
恐ろしく孤独な人生(?)を、彼女は当然の如く冷静に話してみせる。
しかし納得のいかない私は、しつこく食い下がった。
「ずっと土中で暮らしてかなきゃいけない訳じゃないわ。
ただ生まれてから半年間は、土の中で栄養を蓄える必要が有るの。
蓄えた後は土から出て、自由に生きられる」
今から半年間って事は……1ヶ月…2ヶ月…3ヶ月……………6ヶ月目には丁度4月だ!
指折り数えて答を出した私は、息が弾むのも隠さずナミさんに尋ねた。
「10日で萎びるなら…まだ土に返らなくても大丈夫って事だよね!?」
「え?ええ、まぁ…」
「だったら3日後、一緒に来て欲しい!!
是非ナミさんを連れて行きたい場所が在るんです!!
私の願いはそれにして下さい!!」
強く懇願する私の様を見て、呆気に取られたナミさんが素直に頷く。
そうして3日後――私はナミさんを連れ、飛行機に乗って南を目指した。
【その4に続】
…気分はすっかり季節外れのナミ誕である。
すいませんが後1回…いや今度こそ次回で終らせますんで。(汗)
記事上の写真は某店のハロウィン飾り。
最近は何処の店でも普通にハロウィンを祝う様になりましたな~。