日時 平成30年2月10日(月)13:30~17:00
会場 杉並区高井戸地域区民センター
講師 野崎義一氏 杉並区生涯学習会会長
日本経済は戦後2番目のいざなぎ景気を超える状況にあり、経済が順調に推移しているように見えるが我々の暮らしはその豊かさを本当に実感できているのであろうか?前半は公的機関が発表しちる個人に関連する主なデータをベースにアベノミクスの5年間を検証してみる。後半では昨年秋に実施された衆議院選挙にて自民党の圧勝となり、アベノミクスの再起動となり、今後、税制改正や社会保障改革などで、どのようなことが検討されているかを考え、我々の生活にどう影響してくるのかを考えてみたい。
A 日本の現状について
1.アベノミクス「三本の矢」とは?
デフレからの脱却⇒リフレ(2%程度の緩やかなインフレ)政策への転換
デフレを脱却し日本を再び永長の軌道(2020年度にGDP600兆円の目標)に乗せ豊かな社会を目指す。
具体的には企業の業績向上を図り、結果、雇用増加や従業員の賃金UPに繫げ個人消費の拡大を期待し、さらに企業の設備投資拡大を促す景気の好循環を期待する。
第1の矢→異次元の金融政策 第2の矢→機動的な機動的な財政政策 第3の矢→民間投資を喚起する成長戦略 プラス1→東京オリンピック
そのためには,先ず企業業績の回復が急務であり企業が抱えていた6重苦を解消することが先決であった。この面でアベノミクスは的を得た政策であった。
*6重苦=①円高 ②高い法人税 ③自由貿易などへの遅れ ④労働規制 ⑤環境規制 ⑥電力不足の解消・電力価格の上昇
2.アベノミクスの当初の狙いとは?
第1の矢「日銀」⇒異次元の金融緩和 第2の矢「政府」⇒機動的な財政出動→大幅な補正予算 第3の矢「民間」→民間投資を喚起する成長戦略
その結果
Ⅰ.企業業績の向上 Ⅱ.家計所得の増加 Ⅲ.消費者物価の上昇(デフレからの脱却
3.アベノミクスの検証
1)日本政府の見解(内閣府)
ⅰ長期にわたる景気回復
2012年12月から景気回復期間は本年12月で61か月となり、戦後2位のいざなぎ景気を超える長さとなった可能性が高い。
ⅱ景気回復の長期化の現状
雇用環境の改善が見られる。就業者数が185万人増加。保育の受け皿拡大等により女性の就業者が152万人増加したことに加え、若者への支援等により失業率は5.1%と1993
年以来の低水準。
2)海外の見方 OECDの対実経済審査報告(2017.4.13公表)
⇒過去4年間に経済成長は加速
●一人当たり実質経済成長率はOECD諸国と同程度
●雇用創出は強くとりわけ女性の雇用創出が強い
⇒主な課題
●人口は急速に高齢化し減少している
●労働市場の二極化が格差を生み出し男女間の大きな賃金格差が起因 ●生産性上昇が鈍化しており、生産性の水準はOECDの上位諸国の水準をかなり下回っている
●既に高水準の政府債務残高比率は上昇を続けている
結論
生産性は高まったが依然多くの課題がある。アベノミクスの3本の矢すべてをうまく実施することが不可欠である。
3)個人に関連する主要経済指標について 完全失業率や求人倍率は好転しているが実質賃金の上昇には結びついておらず、資産効果を除けば個人消費は依然低迷している。 ⅰ労働分配率の低下 H20年~H24年までは労働分配率は概ね70%だったが、業績好調にも拘わらずH27年67%、H28年64%台へと低下している。 ⅱ家計貯蓄率の低下 H20年3.5%だったがH27年2.7%に低下している。 ⅲ家計調査(二人以上世帯) 総務省統計局 資産効果(株 債権 不動産など)により、一部好調な面もあるが金銭的には個人消費は未だ低迷しているものと思われる。背景としては実質賃金の低下に加え税金や社会 保険料などの負担が重く、実質可処分所得は減少している。特に中堅・低所得者層の生活は以前より苦しくなっており格差が拡大している。対策として政府は4月からのベース UPで経団連に3%の賃金UPをを求めているが、一方今年から改正労働契約法の施行、働き方」改革の一環として①残業代の上限設定②高度プロフェッショナル制度の導入 などの案が検討されており労働者に必ずしもプラス面だけではない。 B.日本経済の展望1.日本経済の抱える現状は! ☆{海外要因}グローバル化 ITの進捗による第4次産業革命 ☆{国内要因}少子高齢化 格差拡大 財政の健全化 ★人生100年時代を見据えて! § 日本の出生数 1949年 270万人 団塊世帯 1965年 182万人 1973年 209万人 団塊ジュニア世帯 1985年 143万人 1995年 119万人 2005年 106万人 2016年 96万人 100万人を割る § 急増する社会保障費 2014年 (医療費) 41兆円 (介護費) 9兆円 2016年 38兆円 10兆円 2025年(見込み) 62兆円 17兆円 2040年(見込み) 100兆円 31兆円 2.アベノミクスの再起動 〇税と社会保障費の一体改革は待ったなし!日本の財政悪化に対し世界の国際機関が懸念を表明しており、財政健全化は喫緊の課題である。 〇政府は2020年のプライマリーバランスの黒字化は断念したが(現状約⒑兆円の赤字予想)新たな税と社会保障の一体改革案を6月頃発表予定。3.来年度予算と税制改革などの方向性 1)平成30年度予算のポイント(平成30年4月~平成31年3月) *人づくり革命 *生産性革命 *財政健全化 2)税制や社会保障関連などの主な改正ポイント *所得税の見直し *社会保障費関連の改定案 *その他の税制 ・観光税、森林環境税の新設、給与控除 ・消費税引き上げ ・個人資産(相続税など)とマイナンバー制度 ・生産地制度の期限切れ(2022年) 3)税を知り買い対応を! 資産は増やすことより減らさない努力を! *優遇制度の活用 ・相続税関連 ・NISA、積み立てNISA(今年よりスタート)の利用 ・個人型確定拠出年金(IDECO)等の利用(60歳まで引き出し負荷) ・住宅資金等控除額増 以上