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1987、ある闘いの真実

2018-10-30 04:41:36 | 映画2018


 ヨニ(キム・テリ)がウォークマンをプレゼントされて喜んでる様子や合コンしようと張り切ってる姿を見ると、人々は平穏に暮らしているように思われるが、閉塞感漂う、黒々としたものが渦巻いているチョン・ドゥファン大統領による軍事政権下。同じ頃、日本はバブルで浮かれまくりでしたが、韓国では自由な論調は完全に押さえ込まれ、大統領による愚民化政策(3Sと呼ばれる、スポーツ、スクリーン、セックスに関心を向けさせる)で人々の関心を政治に関与させないようにされていた1987年頃の実話だ。

 民主化を求めようと立ち上がった人は共産主義者とされ、警察で取り調べを受ける。中でもパク所長(キム・ユンソク)が仕切っていた南営洞の警察ではアカのレッテルを貼られた者が過酷な拷問を受けていた。反政権を叫ぶ学生が増えている中、一人のソウル大学生パク・ジョンチョルが尋問の最中に死んでしまうが、パク所長は隠蔽のために遺体の火葬を申請する。

 一人の学生の死が仲間を奮い立たせ、やがて国中に政治への不信感が広がっていく様子を、警察、検察、学生、新聞記者、活動家といったほぼ5方向からの視点で描き、人間関係が有機的に繋がりを見せる脚本が素晴らしい。パク所長にしても完全悪で描いているわけではなく、元は北朝鮮の富裕層であり、キム・イルソン政権下で家族を虐殺されたために脱北したという過去が明かされているのです。検察のチェ検事(ハ・ジョンウ)は権力には従わず、家族に合わせる前の火葬を断固として拒否。新聞記者たちは上から報道規制を敷かれても、反骨精神を如実に表していた。警察の標的となった組織図のトップに位置する活動家キム・ジョンナム(ソル・ギョング)もいい。神父と行動を共にし、刑務所の看守ハン・ビョンヨン(ユ・ヘジン)から情報を得る。などなど・・・

 パク所長以下の警察官たちは治安維持法下の日本の特高にそっくりだったし、隠蔽大好き、トカゲの尻尾切り大好き、また報道規制のある新聞社なんてのも今の日本の現状と酷似している。また、過剰なまでに北朝鮮を敵国として国民を煽り続けるところも同じ・・・オリンピックを控えてるところまで。しかし、民衆は違った。光州事件でも盛り上がりを見せたし、デモを起こすと、全国規模で広がりを見せ、人々を立ち上がらせるのだ。ちょっと前のパク・クネ退陣デモにおいてもそうだったように、韓国ではデモによって政治を覆すことができるのです。日本におけるSEALDsは注目されたが、世代のギャップがあったりとか、国民すべてに広がりを見せなかったのは残念でしょうがない。

 とにかく、途中から涙が止まらなかったのは久しぶりのことでした。ノンフィクション部分ではあるけど、ヨニが好きになった活動家の学生(カン・ドンウォン)のエピソードでは、“片方が脱げたスニーカー”という小さな伏線があったり、活動家同士のやりとりを“伝書鳩”に例えていたり、その伏線が終盤に堰を切ったように溢れるところに号泣すること必至。悲しみや高揚感や安堵感など、色んな感情がこみ上げてきました。鳩の使い方の上手さはジョン・ウー監督を超えています!

 『タクシー運転手』は未見なので何とも言えませんが、エンドロールに登場した写真の中に、タクシーが集まってバリケードを作っていた様子に胸を鷲掴みにされた気分になりました。史実を基に作られてはいるものの、なぜ韓国はここまで素晴らしい映画を作れるようになったのでしょうか。ドイツもそうですが、歴史を正しく認識して深く自省し、未来に向け同じ過ちを踏まぬようとする姿勢からなのでしょうか。明治時代に戻そうとする政治家が映画に口を出すような国じゃ無理なのでしょうか。やはり、うん、映画の趣旨でもある真実を求めることなのかな・・・


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