チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

職人同士

2013年01月10日 18時57分25秒 | 日記
今日は貞明皇后蚕糸記念科学技術の研究で
「セリシンのある布とない布に江戸小紋を染めたらどんな違いが出るか」
と言う話し合いを竺仙の展示会場で話し合った

桑を育てその桑の葉で蚕を飼育し、塩漬け繭を造る志村明さんが
セリシンを取らないままに糸を繰り上げ織り上げた布
そして塩漬けをしてのちセリシンを綺麗にとって糸を繰り織った布

其れに江戸小紋としては最も神経を使う
「筋物をそめてみようと」
筋物を染めるのは浅野榮一さん

ふたりははじめての出会い

その前にチャコちゃん先生見本切れを竺仙の社長を通して渡してあったが
さすがに浅野さんその見本切れに萬筋を染めてきて下さっていた
3センチの間に32本の筋が入る

「きれい!」
とチャコちゃん先生
「でも裏を見て滲んでいるでしょうこれが許せない」
此の生地を使う限りのりを最柔らかくしなければならないが
もし柔らかくすると此のように裏に少しにじみが出てくる

「大丈夫よ裏生地を付けるから」
ノー天気なチャコちゃん先生
「着る人は其れで良いかもしれないけど染める方はどうしても譲れない」

断られると困るので一生懸命次なることを考えようとするチャコちゃん先生
そこへ竺仙の社長の助け船
「萬筋だから難しいのでしょう?ナカタニさん十二縞ではどう?」
「布はこれで完成ですか?」と浅野さん
「そうです」と志村さん

そこから布目のことや織の細部にわたり二人で専門的に細かく話し合う

「やってみましょう」
「やってみましょうではなくやってほしいんです」
と押しつけるチャコちゃん先生

浅野さんと志村さんがその後お互いに相手の分野のことを理解しようと話し合っている
二人の姿勢がだんだん柔らかくなり信頼を寄せ合った雰囲気が醸し出されてきた

尊敬を込めてあえて職人と呼ばせていただくが
お二人ともご自分の仕事に「美」というものをいつも追究していると思った

嬉しい時間だった

自分の道を究める人の真剣勝負



コメント
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