発毛治験報告書

あれから5年。ついに「禿」として生きていく覚悟を固めた不惑男の徒然。

シュガー&スパイス~風味絶佳

2006年08月29日 | 甘辛シネマ道場破り
★★★☆☆
 
 これを言っては身も蓋もないのだが、「恋愛映画」はどんな作品であれ、私は好きではない。強いて好きな恋愛映画をあげるとすれば、笑える恋愛映画「メリーに首ったけ」くらいなものだ。恋愛をテーマにしたものは面白いと思えない。この理解不能な感じは「NANA」を読んだ時にはっきりと意識した。女子が「北斗の拳」や「蛇拳」を理解できないのと同様なので、この男女の価値観の違いはきっといつまでも平行線に違いない。恋愛モノを鑑賞する時の私の脳は「ふーん、‥‥なんだかな」というモードになっているのだが、逆に恋愛というものを客観的に捉え分析できるという面もある。
 恋愛作品のファクターというものを分類してみた。①シンデレラストーリーと呼ばれる、誰もが憧れるような恋愛成就の物語。②絶対的な疑いようのない二人の愛で逆境を乗り越える物語。③第三者の介入によって関係が微妙に変化していく物語。一口に恋愛映画と云ってもその内容はマチマチ。①は言わずもがなのプリティウーマンやサブリナ。②はロミオとジュリエット。③はあいのり(映画じゃないけど)。これはもっともありがちな設定(同時に、最もリアルに感じる設定)なので例をあげるとキリがない、殆どの恋愛モノはこの要素を伴う。現代の恋愛作品は一般的に①②③それぞれのファクターが絡み合い、複雑な恋愛劇が紡がれるのだが、恋愛作品ほど、その原作者および監督の恋愛観が如実に反映されるものはない。このシュガー&スパイスにおいても原作者山田泳美の恋愛観が控えめに、だが色濃く映し出されている。もともとこの作者の小説にはどれもそういう癖があるのだが、私にとっては正直鼻につく。

 「愛と憎しみは表裏一体、本当の恋愛を知ればそのことがわかるはず」「本当の恋愛は、いつまでも忘れることができないもの」「でも、臆病にならず、立ち止まっていないで恋をしようよ」「そうしたらきっと素敵な恋愛の方法がわかってくるよ」
以上である。なんだかな、という感じである。恋愛をテクニカルなものと捉え、ふったふられたを、勝ち負けのように考えている作者の考えを巧みにオブラートに包み込み、ピュアなラブストーリーに仕立て上げた監督の手腕は評価できる。キャストは、沢尻エリカがとにかく可愛い。そして小憎たらしい。主人公は間違いなくやぎらゆうやなので、男性が観た方が感情移入しやすい映画と言える。
 この「シュガー&スパイス」というタイトルは、ダブルミーニング。女性との恋愛のかけひきにおいて必要なバランスのことで、言い換えれば「アメとムチ」。もう一つは、本当の恋愛は楽しかったり、辛かったり、魂が揺さぶられるものだ、ということで、言い換えれば「ビター&スィート」。楽しめたかどうかと言われれば、どうにも答えられないが、完成度は低くないし、「恋愛の達人」からは共感を得られる作品なのかもしれない。