カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

簡略化が過ぎたかもしれない   シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~

2014-10-01 | 映画

シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~/ダニエル・コーエン監督

 放映時間も限られているし、内容を分かりやすくするためにも、さらにお話自体を面白くする要素にも重要であるのは、やはりデフォルメである。深みはなくなる恐れはあるが、致し方ない。さらにそのデフォルメ次第で、その作品の一定のトーンもはっきりする。どんな作品であっても、たとえそれがドキュメンタリーであっても、意識的に作者のデフォルメは入る。見るものは、そういう作者の意図を酌んで作品を楽しむわけだ。
 コメディにおいてこの背景のざっくり感は、そのギャクの土台でもある。正直言ってシェフの舞台裏をコメディにしているのだから、暴露的な問題意識はあろうと思われるが、要するにちょっと簡略化しすぎているきらいを感じる。人間はそんなに単純じゃ無いし、悩みというのはそんなに浅くは無いのではないか。いや、深刻だからいいということは無いが、その程度のなら、そんなに悩まず止めたらどうなの? と思ってしまうわけだ。これだけの才能があるという前提だから、見出す人は自然に増えるだろう。事実分かっている人がそれなりに多数で、そういう土台を本当に運のいい一人のシェフが、偶然拾って表に出すわけだ。最終的にはその力でもって、危機も打開できてしまう。痛快には違いないが、やはり都合が良すぎると感じてしまうことになる。うるさいなあ、というのは分かるけど、コメディのなかにもちょっと深い深刻さがあると、もっと良かったのにな、という感想であるわけです。
 さてそれでも、有名レストランのシェフが、星の評価を落として自殺した、なんて話は事実としてあるらしい。そこまで嘆くこと無いじゃないか、と関係ない人は思うが、しかしそこまで深刻なのは、恐らく生活がかかっているからだろう。確かに一定の権威あるガイド本に優れた評価のお墨付きがあるかないかで、売り上げというか、そのままレストランの経営に関わることになりかねないのだろう。人というのはそれだけ人の評価に左右されるということもいえて、まったく残酷な話である。一方でそういう評価と関係なく、人気のある店というものはあるだろう。いや、実際には評価の連鎖によって人気があるはずなのだが、一流店ではなくても、人気がでればいいわけだ。最終的には評価がついてくるものかもしれないが、大衆的、または一定の基準を満たすということは、それなりに複雑な化学反応を引き出すということだろう。評価が先か、自分の腕が先かは単純にはいえないが、一度獲得した栄光を維持するというのは、やはり大変なことなのかもしれない。
 それでも人というのは変化する。同じ味を守り続けてそれが変わらず評価され続けるとは限らない。相対的なことだが、特に味という不安定で主観的なものを基準としている世界においては、自分以外のものに頼らざるを得ないものがあるのかもしれない。それを打開するのが天才なのか、はたまた自分の努力なのか、本当に気に食わないのは、そのような考え方ということなのかもしれない。
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