カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

冷酷非道が正義の側だったら   ボーダーライン

2018-03-13 | 映画

ボーダーライン/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督

 メキシコの極悪麻薬組織殲滅のために現地に送られた女性捜査官だったが、現地の状況は想像以上に過酷で、組織撲滅のために動いている人々の方が、さらに極悪であったりして困惑する。彼女が送り込まれた本当の理由も、単にFBI捜査官がいるという状況であればいいという事情の為であって、麻薬捜査の方が明らかに軌道を逸した残酷なものであった。行きかうのは人間の根元的な復讐心であり、その実行のための人殺しである。麻薬の前に人の命は、どんどん軽くなるようなのだった。
 戦争なのかと見まごう銃撃戦があったり、拷問や裏切りやあらゆることが麻薬の金の為になされる世界があるという事だろうか。これまでにも麻薬捜査のすさまじさを映像化した作品はあると思うが、やはりここまで冷酷に人を殺していく作品は少ないのではないか。麻薬組織を壊滅させる目的は確かのあるのかもしれないが、単に相手を恐怖に落としながら殺すというのが、現地の捜査の人間の考えの中にあるようだ。もはやこれが人間的なのかどうかというところまで、救いようのない世界になっている。もちろんそうなってしまった理由もあるようだが、それは科白にもあらわされているが、だからといってこういう捜査が許されるはずはない。女性捜査官は、懸命に自分の良心と闘いながら抵抗しようと試みるが、やはりこの世界の現実の前に、打ち砕かれていくようであった。
 まったくもってハードな内容で、どうにも気分は最悪になってしまう。しかしまあ、こういうのもいい映画と言えるのかもしれないとは思う。いやもう全然お勧めできないのではあるが、それでもこの映画を好きだという人も結構いるのではないか。それはやはり映画として優れているからに他ならない訳で、まったく困ったことなのである。
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