カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

気取ったヤクザは、ただのヤクザではない   ハード・オン

2015-12-29 | 読書

ハード・オン/矢作俊彦作・平野仁画(双葉社)

 ヤクザものだが、組織で立ち回るいわゆる仁義というしがらみに生きるヤクザではない。個人プレイが中心で、しかも科白にある通り、気取ったヤクザの物語だ。魅力的な女も出てくるし、魅力的な女に見える男も出てくる。最初は信用ならない感じだが、しかし男の友情めいた行動をとる変なヤクザも出てくる。警察に追われるだけでなく、結局組織の仲間からも命を狙われてしまう始末。そういう展開を、気取ってやり過ごそうとするところは、アクション的なかっこよさと、ちょっとしたコメディにもなっている。科白回しがとにかく気取っていて、普通の日本人の会話とは思えない洒落っ気がある。ハードボイルドのずっこけ感も少しあるけど、やはりその気取り方はそれなりに一流という感じだ。海外ものミステリを研究しまくって、それで日本の任侠にもあてはめて再構築した世界観といったところである。漫画だからそれなりに成り立つが、日本の俳優を使ってやってしまったら、少し寒くなってしまうかもしれない。
 それでも面白いのは、テンポの良さと舞台の設定の仕方もあるだろうが、無理にでもかっこつけようとして、しかし時には本気になっていることが分かるからかもしれない。無茶をやっているから当たり前といえばそうかもしれないが、それなりに自分哲学があって、損得を越えてやらなくてはならないこともある。人を殺す非情さも持ちながら、無情な生き方もできない。ヤクザの理屈もわかるし、しかし警察から追われる生活から抜けられない。いつまでも気の抜けない生活でありながら、恋があって友情がある。僕自身はそんな生活をしたい訳ではないけれど、それなりに気を張って、スリルがあって、楽しい毎日なのかもしれない。舞台は東南アジアにならざるを得ず、そうしてその地もいつまでも安住の地とは言えない。引っ越しの多い人生が楽しいとは限らないまでも、そういう生き方を見て楽しむ分には何のリスクも無い。気取ったヤクザのアクション漫画を爽快に読むのは、そのような効用があるに違いない。
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