カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

OSO18というヒグマの存在

2023-03-29 | ドキュメンタリ

 多くの家畜被害を出しているヒグマを追ったドキュメンタリーを観た。4年間で牛が31頭殺され、32頭が負傷。2頭が行方不明になっているという。これらを襲ったのは一頭のヒグマと考えられている。それがOSO18(おそじゅうはち、と読む)である。
 北海道のオソツベツという場所で最初の被害があったことと、その足跡が18cmであるとされることからOSO18と名付けられた。非常に頭のいい個体らしく、姿を見たものはいない。罠にもかからず、ハンターの包囲網にもかからない。被害は年々増えていくが、襲った牛をろくに食べることもせずに殺し、時には傷つけるだけで、まるで殺戮を楽しんでいるかのようである。家畜の被害総額は膨らみ、自然環境を生かした放牧が危うくなっている現状があるようだった。
 ところがである。このヒグマを追っていくと、だんだんとその意外な姿が明るみになっていく。狡猾で頭がいいのは間違いないが、当初は18cmと言われていた足跡は16cmであり、特に巨大な個体ではないことが分かる。楽しんで殺戮しているという訳ではなく、以前にハンターから被弾を受けて、非常に用心深くなっているために、ちょっとしたことでも逃げてしまい、ちゃんと食べずに放置しているのではないかという。
 しかし肉食への執着があり、襲撃を止めることができない。その理由は、保護されているエゾシカが増えすぎており、事故などで死骸が放置されて(また、ハンターによっては駆除した死体を放置するものもいるらしい)いるものの肉を喰らったヒグマが、その味を覚えて家畜を襲うことがあるという。また、家畜のえさとして栄養価の高いデントコーンと言われるトウモロコシの栽培が盛んになっており、これはヒグマも好んで食べるとされる。トウモロコシの背丈は高く、畑の中に入られるとヒグマの姿が隠れる。そうして家畜との距離が近くなることもあり、被害のリスクが高まっているという訳だ。
 要するに、人間の行いによって、このようなモンスター・ヒグマを誕生させているというのである。牛を飼っている農家にとっては、経済的被害を含め、憎むべき存在であることは確かだろうけれど、そもそもは人間側の都合によって、肉食の習慣の無かったヒグマの本能を目覚めさせ、目の前に餌をぶら下げておびき出しているようなものなのかもしれない。
 人間は自然を破壊して、自分の都合の良い環境を作り出し、その中で快適な生活を送っているものかもしれない。しかしそれは、そもそもの自然界においては、やはり不自然なことなのである。そうして限りなく自然界との接点が近づくと、人間にとって不都合とされることが勃発する。人間という生き物自体は自然由来だが、人間という生き方は自然との共存の拒否の上に成り立っているのかもしれない。
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