カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

サバイバル子連れ狼   ザ・ロード

2015-07-06 | 読書

ザ・ロード/コーマック・マッカシー著(ハヤカワ文庫)

 理由はよく分からないのだが、近未来の恐らくアメリカで、国家などの機能が働かないほどの災害か核戦争などの所為で、廃墟になってしまった無法の地が舞台だ。父と子が南を目指して放浪している。恐らく冬を前にして、ただでさえ寒くなっている地域を抜け出す必要があるようだ。移動しなくても死が待っており、移動してもリスクは多い。しかしそれでもわずかな望みにかけて、生き延びるために仕方なく移動しているものらしい。カートに必要最小限の荷物や食料を積み、他の人間に極力接触しないように細心の注意を払いながら、空家や放置された家々を時折物色し、壮絶なサバイバルを繰り広げながら旅をしていく。生き残った人間も、同じように飢えており、ひょっとすると善良な人がいるのではないかという淡い期待は持ちながら、しかしもし捕えられでもすると、子供は犯された上になぶり殺しにされる運命であり、父は容赦なくその場で殺されることになるだろうことが示唆されている。実際にそのような場面に何度も遭遇し、一丁の拳銃に弾丸が残り一つだけになってしまっている。身を守る最大の武器であり、ひょっとすると子供の命を最後には絶つための貴重な手段なのかもしれない。
 そのような生活の描写と、父と子の会話のみで物語は展開される。他の人間に見つかる恐怖感と緊張感。しかしながら容赦なく襲う過酷な野宿と自然との闘い。そしていつも飢えに苦しみながら、過去の人間が残した食べ物を探し出し食わねばならない。父親の能力は大変に高く、様々な隠し場所から辛うじて食べ物を見つける能力のようなものがある。そういう意味では幼い息子はお荷物であるはずだが、しかしこの子が居なければ、果たして父はここまで強くなれたのだろうか。
 悲惨極まりなく、過酷なだけでなく、何も希望が見いだせないような世界にありながら、この親子が生きるということは、ただ生きながらえているだけの事でありながら、かすかな希望がある。廃墟や座礁したボートなどから生活に必要なものやわずかな食料を探し出し、一時にオアシス生活をする幸福。その幸福の中にありながら気を抜けない緊張感を保ち、何とか善良な精神を持ちながらえて生きていく。しかしそれでもその先には、やはり絶望の風景以外に見えないのだが。
 なんか、映画化されたような話なんだが、これでほんとに良かったのかな、とも思うわけだが、まあそれはそれとしての考えがあるんでしょう。怖かったけど読み終えて良かったです。
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