ラヴィ・ド・ポエーム/アキ・カウリスマキ監督
売れない貧乏作家は、とうとう住んでいるアパートから追い出される。放浪していると、売れない画家と知り合い、自分のアパートに戻ってみるのだが、そこにはやはり売れないミュージシャンが新たな借り手として住み始めていた。画家は作家がそのまま家財道具を置いて出て言った部屋で暮らしていたので、作家は部屋は君のものでも、家具などは自分のものだと主張して、結局一緒に住むことになるのだった。そのうち貧乏な画家には彼女ができるが、画家は不法入国がバレて国外追放になってしまう。何とかフランスには戻ってくるが、貧乏生活に耐えかねて、恋人は去ってしまうのだった…。
とにかくなんとなく不条理だけど、貧乏であっても芸術を捨てない人々の話といえるかもしれない。明るさは無いが、ものすごく悲観的なわけではない。一応出版にこぎつけることもあるし、絵が売れることもある。ギャンブルで勝つことだってあるのだ。なんとかかんとかやりながら金は工面して、自動車を買ったり、彼女を連れてピクニックに行ったりもする。金に困窮してはいるものの、時には楽しいこともあるということかもしれない。
しかしながらこんな暮らしで、みんながみんなハッピーであり続けることはできない。特に一緒に暮らそうという女性にとっては。愛はあるが生活もあるということなのだろうか。最終的には愛を選ぶ代償を払うことになる。切なく悲しい物語なのである。ラストに流れる音楽が、日本語の「雪の降る街を」であり、なかなかのインパクトがある。もちろん僕らが日本人だからだろうけれど、北欧の人(この映画はフランス語だが)にとっても、印象が深まるという計算があったのだろう。カウリスマキ作品らしい映画を堪能できることだろう。
またこのDVDでは、「トータル・バラライカ・ショー」のコンサートも一緒に観られる。ふざけたようなコンサートだが、そういうセンスというのは、なんとなく分かって面白いかもしれない。