カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

みんなもっとエリートに優しくしよう   いいエリート、わるいエリート

2021-06-28 | 読書

いいエリート、わるいエリート/山口真由著(新潮新書)

 まずこの本を書けるという前提に著者の歴史がある。帯にもあるが東大を首席で卒業し、財務官僚を経て、弁護士になり、それでもさらに米国へ留学し(ここまでで本書は終わるが、その後国際弁護士になったらしい)、といういわゆる本人が超のつくエリート人生を送っている人であるようだ。さらに帯にも写真があるが、いわゆる美人なのである。僕は知らなかったのだが、テレビにも出ている人らしい。この本が2015年発行とあるから、情報が古いが、タレント性が高いからこそ、この本も書かれたのかもしれない。
 表面はそのように華々しいが、ではそういう内容なのかというと必ずしもそうではないと思う。なにしろそのようなエリートになる為に、並大抵の勉強をしてきたわけではないことが素直に語られている。どのように勉強したかという勉強法も紹介されているが、一応7回読み勉強法と言っているけど、要するに繰り返し復習しなおして内容をしっかり理解するという、なんというか、急がば回れというか、実直に時間をかけてとことん追い詰めて勉強をするという愚直なものである。そんなことをやれる人なんてほとんどいないし、そんなことを続けられる人なんて本当に居るのか? という感じだ。しかし彼女はその勉強法に迷いはないし、本当に毎日十数時間を費やして勉強ばかりしていたようだ。時には仲間外れにならないように表面的に女子としてふるまわなければならないが、本当は誰に何を言われようと、勉強に専念したいという思いを抱き続けながら、そうして着実に成果を出し続けていき、そうするとさらに欲のようなものがあって諦めきれず、まだまだ自分を追い込んで勉強を続けていき、ついにはちゃんと狙ったうえで、東大の主席になったのである。
 もちろん挫折めいたこともあるようだが、それを含めて力に変えていく。そもそも地頭が悪いという考えもあって、努力するよりないことを自覚して、そういうコンプレックスをバネして、まさに臥薪嘗胆で諦めずに努力する。それこそがエリートになりえた執念というか、それを売りにしていると批判されても、傷ついても、さらに努力を重ねる生き方や考え方が書かれてあった。凄い人というのは、いわゆるそういうそぶりをあえて隠すものだが(想像だけれど)、第一そういうのは人には分かりえないものだが、いくら真似されても正攻法で自分が勝てるという自信が伝わってくるような話である。
 また、特に財務省時代の過激な労働環境にありながら、すべてが優秀な人々の中で、その優秀な人々がどんどんおかしくなったり挫折したりすることも紹介されている。本当は恨んでいる人もいると考えられるが、その紹介の仕方も、ある意味で自分の攻撃をかわしながら表現しているやり方が上手いとも感じた。そうして女性であり優秀な自分の抵抗勢力的な変な人々に対しても、感謝さえしている姿勢を見せている。それは何より自分を成長させてくれた人々であるからだ。なるほど、そんな風に愚痴るものなんだな、と勉強になりました。
 ということで、表題のようなベタベタな内容というより、やっぱりあきらめたり頑張ったりする参考になるのではなかろうか。著者はまだまだ挑戦を続けていくことだろう。素直に期待しております。
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