カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

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このような大統領が選挙に勝てる気がしない   未知への飛行-フェイル・セイフ

2017-12-21 | 映画

未知への飛行-フェイル・セイフ/シドニー・ルメット監督

 1960年代の米ソ冷戦時代の世相を反映した映画。米国爆撃機の編隊に、誤ってソ連への水爆投下の命令が下る。当然間違いだから取り消そうとするが、さまざまな妨害が重なり、さらに特殊事情の為訓練では無く職務を全うするための決まりごとを、逆にパイロットたちはまっとうする行動をとらねばならなくなる。マニュアルに則って、大統領の直接の指令も無視するしまつである。仕方がないので自群の戦闘機で編隊を打ち落とそうとするが、全機は無理。さらに何とソ連にお願いをして、自群の戦闘機を打ち落とす作戦を展開する。何しろ打ち落とせなければモスクワに水爆を投下してしまう。当然ソ連はその報復として反撃をするだろう。そうなると事実上人類は滅亡するだろう。
 白黒映画で、ほとんど会議や電話などの場面のみでお話が展開する。それは同じルメット監督の名作の「12人の怒れる男」と似たような作風かもしれない。大変な危機に米国軍隊のお偉いさんは大混乱。この機に一気にソ連を叩こうとする強硬派や、ソ連自体の陰謀説をぶつもの、上官の命令を受け入れられないもの、そもそも味方に攻撃を加えなければならない苦痛に耐えられない神経のものもいるようだ(当然だろう)。さらに米国大統領は、もしもモスクワに水爆が投下される事態に陥ったのなら、世界大戦を防止するためにニューヨークにも水爆を落とすという判断を下すのである(同じような犠牲無しに、ソ連が報復を諦めるはずが無い為)。もう無茶苦茶である。
 映画としては緊張感があって、名作という声も多い作品である。冷戦当時のことを思うと、大変なリアリティをもった恐るべき作品であったというべきかもしれない。派手な特撮は皆無だが、演出もなかなか考えられている。絶望とは何か、衝撃を受けた人も多かったのではないか。
 という事で簡単に僕の感想を言うと、そうではあるが、やはりこれらはあり得ないとしか言いようのない話という印象をもった。このような危機感はずっとあったと思うし、このような事故もあり得る状況はあるだろう。そういう部分に対してはとくに合意するものだけれど、それを受けての大統領の判断は、ちょっと人間離れしていると思う。そのような人間的な合理的判断というのは、哲学や倫理問題のような考え方の実験としては成立しえても、個人の大統領としての立場として生み出されるものでは無いように思う。ちょっと特殊すぎるのである。いくら大統領の権限があるとしても、米国軍がこれらに従うとも考えにくい。さらにその後の米国世論が、大統領の判断に納得することは無いだろう。それくらい人間は身勝手だし、それが民主国家の悲しい性だと思う。
 「シン・ゴジラ」もそうだったけど、映画を作る側の人は、国を動かすようなリーダーに過大な期待をかけすぎているのではないか。彼らも人間だし、もっと間違うことを想定して映画をつくってもいいのではないか。そういうことが、リアリティという気もするんだが…。
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