にっぽんほら話/和田誠著(講談社文庫)
和田誠の掌編小説というような、短い作品が24編入っている。落語もSFも昔話も入っている変わった作品集だが、何より変わっているのは和田誠作品なのに、表紙と目次以外のイラストは、他のイラストレーターの書いたものだ。いろんな雑誌や広告に書いた文に、仲間から絵をつけてもらったという。
和田誠とという人らしからぬ本であるかもしれないが、そういう変なところがまた、和田誠らしい感じもするから不思議である。オリジナリティにあふれていながら、なんだか知っているような話もある。誰かの与太話に聞いたことがあるような気がするものがあるが、それでも和田誠のように気が利いている訳であるはずが無い。なんとなくいい加減そうな話でも、しかし気が利いているとしか言いようがない。下品だったり残酷だったりもするんだけれど、そういう印象が残ったりはしない。軽すぎないし重すぎない。まさにこんな感じになるよりないよな、という感じかもしれない。
和田誠が亡くなったので、持っているものとか、持ってないものとか適当にパラパラやっていて、これが一番薄いので先に全部読んでしまった。惜しい人が亡くなったなあ、と改めて思うのだった。