ラ・ラ・ランド/デミアン・チャゼル監督
オーディションに落ちつづけ仲間と一緒に顔を売るためにパーティに繰り出す。収穫無く、さらに車までレッカー車で運ばれてしまい歩いて帰っていると、あるバーからピアノの音が聞こえる。引き込まれるように聞き入るが、このピアニストはちょうど解雇されたところだった。
まあ、出会いはともかく(実際はオープニングで出会ってたし)、二人は付き合いだすようになる。今はくすぶっている二人だが、お互いに才能は眠っている。夢を語り、夢のためにお互いに努力をして、そうして何かを掴もうとしている。
先に彼氏の方が、誘われたバンド活動で売れだす。やりたくない曲はやらないと言っていたが、方針を変えたのである。ある意味で付き合いだした女の為なのかもしれない。しかし女の方は、自分の演劇の芽が出ないイラつきもあるし、彼氏がそんな風に信念を変えるような事が気に食わない。そのようなすれ違いが、二人の溝を深くしていく。
最終的な場面は、この映画の醍醐味なので語れない。激しいカタルシスと喪失、そうして何とも言えない悲しさが爆発する。おそらくフランスのミュージカルのオマージュだろうと思われるのだが、はるかに出来はいい。過去にもしもは無いのだが、人々はしばしば、そのもしもにとらわれる。そのようなものを実現させるためにはミュージカルが最適なのだ。そうしてこの爆発があるからこそ、現在も生きて行くことが出来るのだ。
大変に素晴らしい出来栄えのミュージカル映画。子供でなくても踊りだしたくなる。力を抜いた踊りっぷりで、無茶苦茶ダンスが上手くなくても踊れる気分になれる。劇中使われる小道具もそれなりに凝っていて、皮肉も含めそういうものでも笑わせられる。いわゆる上手い、映画である。まあ、観終わった印象はかなり物悲しいものではあるんだけれど。
企画の段階では実現にかなり苦労した映画だったらしいが、結果的に大成功を収めた。人々が求めている映画というのは、求められていそうな映画なのではないのかもしれない。現代では厳しいと考えられるものであっても、それ以上に情熱があるから、気付かされるものがあるのかもしれない。そういう意味では大変に勇気づけられるヒットだったし、チャゼル監督のますますの活躍を期待するところである。