北の夕鶴2/3の殺人/島田荘司著(光文社文庫)
イラストの画力はいいのだが、なんとなく持ち歩きにくい感じがする。目を引く感じが雑誌的なのかもしれない。僕は文庫本などにカバーをかけないで持ち歩くので、こういう表紙じゃない方が助かります。
別れた奥さんから電話がかかってきて来たが、夕鶴号に姿を見ただけで行ってしまう。翌日この列車で殺人事件が起こってしまい、どうも被害者が元奥さんではないかという疑いがあり、主人公の刑事は個人でこの事件を追うことになるのだったが…。
北海道の奇怪な殺人事件との絡みがあり、その謎解きを含めて元奥さんが非常に厄介な境遇のまま行方が分からなくなっている。地元では大々的にミステリとして話題になっている殺人事件は、高名なトリックがあることは見て取れるものの、まったくその謎を解くカギが見つかっていない。無理に休みを取って個人的に捜査をしているものの、あまりに時間が無さすぎる。そういう中で暴漢に襲われるなど、絶望的な困難に苦しめられることになる。
謎解きの方は、はっきり言ってものすごくとんでもないトリックなのであるが、面白くない訳では無い。ちょっと無理はあるけど、見事である。アクションもふんだんにあって、ストーリー展開は手に汗握ることになる。男女の恋愛ものでもあり、そういう心理の絡みも読みどころかもしれない。主人公はいささかやりすぎではないかと思われるし、こうなってしまうと、実際のところこの話は奇跡的であるとしか言いようがないが、感動的ではあるのである。エンタティメント作品としては、面白ければそれでいいという事に徹している作品といっていいだろう。
実は一度出張中に持って行ったが、どうも飛行機の中に忘れて来たらしく失くしてしまった。そのあとやっぱりどうにも気になって買い直して読了した。そういう意味では、やっぱり魅力的な作品だったのである。ある意味で壮大で、ある意味で実に個人的な問題でもある。そういうものが見事に絡まったお話の展開は、やっぱり傑作なのかもしれない。