夜は短し歩けよ乙女/湯浅政明監督
森見登美彦原作小説の映画化。原作小説は一年間の出来事らしいが、映画では一晩でのエピソードになっている。
黒髪の後輩女性に恋する先輩だが、なるべく偶然を装いストーカー行為のようなことをしていたが、その思いが届かないままであった。しかしその夜は様々なことがあり、大量に酒を飲んだり、古本市をひやかしたり、学園祭が開催されていたりして、ちょっとハチャメチャなことが立て続けに起こるのである。そうしてこの二人の恋の行方はどうなるのか? というか、そのことの成り行き自体を楽しむ作品かもしれない。
確かに文学的というかなんというか、ちょっと考えられない思考の連続があって、エピソードも面白いといえばそうだし、めんどくさいといえばそうである。今でいう中二病の人々ばかりが混然一体となってばらばらに何かやりだして、とても収集がつかないような展開になっていく。それでもさらに非現実的な流れがそれらを収斂していき、そのリズムのようなものが観るものを困惑させながらも楽しませてくれる、という寸法である。馬鹿げているようでいて大変に真剣で、まあ今の学生がどうなのかはよく分からないけれど、いわゆる文学的な学生なら喜ぶような言葉遊びなり理屈なりがあって、メルヘンのような漫画世界がそれらをうまい具合につないでいるように思えた。
日本のアニメは何も宮崎駿だけではないと古くから言われているが、そういう分野の作品ですらまったく違うアニメ世界である。困惑してしまうが、そういう変なものであっても観てもよいと思うのならば、観て楽しめるのかもしれない。