カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

写真の名場面と映像はかなり違います   七年目の浮気

2021-07-17 | 映画

七年目の浮気/ビリー・ワイルダー監督

 いろいろあるが、地下鉄の通気口の上に立ってスカートがあおられる場面が有名な映画。確かに素晴らしいけど、そもそもどうしてそんな場面が存在するのか、映画を観て知っている人はそう居ないのではないか。僕もかなり前にこの映画は観ているはずだが、ほとんど忘れていた。今回見返してみると、あの場面が特に重要な映画でもないことが分かった。いや、モンローさんも大変だったのだろうな、とは思ったけれど。
 そもそもは奥さんと子供が夏のバカンスに田舎に行ってしまう間、自分だけは仕事が忙しすぎで行けないなか、上の階に住んでいる住人もバカンスか何かに行っている間、間借りをしている若い女と知り合う、というお話である。それがマリリン・モンローで、しかもその二階の部屋にはエアコンが無いらしく、扇風機ではとても暑いニューヨークの夜をしのげないという設定だ。下の階に住む男の部屋にはちゃんとエアコンがあって快適なので、女はできるだけ下の部屋で過ごしたい。しかしながら妻子の留守中に若いブロンドの魅力的な女と二人で過ごすうちに、男は勝手に妄想を膨らまし、我慢できなくなっていくのだったが……。
 マリリンにもセリフがたくさんあるが、基本的には男が勝手に妄想をどんどん膨らませていくような一人劇のような場面が多い。その妄想も異常で、そういう異常さを誘うような暑い夏のさなか、ひと時の自由な独り身になった男がどうなってしまうのか、という展開だ。マリリンには正式な名前さえない中、男の妄想に寄り添うように、ただ魅力的に存在している。すでに実際にマリリンは人気絶頂で、しかし撮影中は精神が不安定で科白をろくに覚えられなかったといわれている。そうして名場面としてはカットされたロケでのスカートが捲れる撮影を見た夫のジョー・ディマジオは激怒し、その二週間後に離婚となってしまったといういわくつきだ。
 本当にマリリンはかわいそうな女性である。映画としてもそのような扱われ方であるし、あくまで男性から求められる女性であり、セックスシンボルであり続けることに疲れていったのではないだろうか。まあ、本当に可愛いんだけどね。実際こんな人っていないでしょう。
 そういうわけで、なんだか疑問の多い作品だが、もともと舞台劇だったということと、当時倫理的な検閲の激しいアメリカ社会において、不倫問題を扱うのはそれなりに厳しい条件だったともいわれていて、それが何となく中途半端で分かりにくい男女関係に終始する内容になってしまったのかもしれない。その後もマリリン喧騒は終わらなかったわけで、映画の出来栄え、伝説だけが長く残る作品となってしまった。
コメント
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