カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

コロンボをよく知らない上司   権力の墓穴・刑事コロンボ

2017-10-30 | コロンボ

権力の墓穴・刑事コロンボ/ベン・ギャザラ監督

 今回の犯人は、何とコロンボの直属の上司。この人の向かいに住んでいる友人から妻を殺したという相談が来る。警察の友人に相談したというのは事実上自首のようなものの筈だが、この上司は友人をかばって殺人を物取りの犯行にすり替えようとする。アリバイ工作をして、逃げる犯人を目撃したと自ら証言する。その上で、何と今度は自分の妻を殺してしまうのだ。物取りの連続殺人事件として、自分の妻殺しを一緒に処理しようという大胆な犯罪に及ぶのだった。
 お話は評判も高くトリックの完成度も高く、更にコロンボの仕掛けた罠も見事に決まるカタルシスも高い作品。まさにその通りという気もするが、あえて考えてみると一番不思議なのは、このような自分に関わる事件にもかかわらず、上司である犯人が優秀なコロンボを捜査に指名して窃盗犯人を追わせている点にあるかもしれない。いわば勝負を賭けている感じもするし、逆に過小評価してしまうほど愚かな上司という気もする。上司といえども警察組織の役人で、赴任してきたばかりでコロンボのことをよく知らなかったのかもしれない。そう考えるとつじつまは合うようだが、捜査方針を強引にコロンボに従わせようとするところが、かえって苦しい展開を生んでいるようにも見えるのだった。警察組織の人間であるコロンボは、その指示に従って物取りの有力犯人に近づき、そうして逆にこの泥棒と一緒に手を組んで上司を落とし込む罠を仕掛ける。非常に皮肉が効いている訳だが、そんなことやっていいのか、という倫理感が、ちょっと日本の警察とは違うような感じだ。
 また、コロンボの愛車(プジョーらしい)が既に15万キロも走っていることと、下取り価格が80ドル(今とは為替レートが違うが、せいぜい1万数千円という感覚ではないか。要するにはした金。それも冗談としてのサービス料金かもしれない)ということも明かされる。コロンボ・ファンとしては、そういうところでも楽しめる内容である。バーでは多くの人間が、つまみも無いビールをちびちび飲んでいる(あんまり景気は良くなさそう)。当時のアメリカ社会の描き方も、やっぱり楽しいコロンボ作品と言えると思う。
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