カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ハチャメチャ・カルト作品   ジャズ大名

2017-08-25 | 映画

ジャズ大名/岡本喜八監督

 奴隷解放で自由になったはずだがあまり自由も謳歌できずに、アフリカに帰ろうと決意し、何かの貿易船に乗り込んだ黒人四人組だったが、途中一人は船舶の中で死亡。本船も嵐に遭難しているどさくさの中で小舟に乗り移り三人で脱出。たどり着いた場所が幕末の日本の某落ちぶれた藩であった。たまたま城主が音楽好きであったのと、藩として倒幕か幕府派かはっきりしない上に百姓はええじゃないか運動などをやっていてもう何もやる気は無い。いろいろ駆け引きはあろうが、特に外国の黒人をかくまうと厄介事は増える。それでも何とかあってみると四人は大変に楽しい音楽家で、城主は死んだ奴のクラリネットを貰い受け、一緒になってセッションを始め城内は大変な騒ぎに突入していく。
 実はあらすじは実際にそれだけ。まあ、細かくはいろいろあるけど、単に無茶苦茶なお話で、その無茶苦茶がカルト的に作られてしまったという快作。というかなんだろか。特に面白くもなんともない話ではあるが、そうだったら面白いだろうなというのが実現してしまった映画だろう。だからそれでどうという話ではないのだけれど、多くの人が愉快そうなので、それはそれで良かったのかもしれない。
 ジャズというのは単純だけど非常に奥深く皆が楽しい、ということが体現される訳だが、本来なら皆大変に深刻で生死を分けるような過酷な状況にありながら、ジャズだったらしかし笑い飛ばせるという変な教訓めいたことも得られる。それでいいとか悪いとかいうようなことも越えていて、映画のつくりとか時代考証とか、そういうものもなんとなく超えている。もちろん当時の価値観のようなものも少しくらいは考えている様子はあるが、そういう遠慮や危うさもたやすく超えてしまうような、凄まじい力がジャズによって伝播していくわけだ。楽しんで作っているのかどうかさえ分からないけど、もうこうなったら何でもやっていいという空気は伝わってくる。いつの間にかいろんな人が出演していて、これはこれで時代の空気だったのかもしれないな、とも思った。昔はみんな若かったんだな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする