カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

なんでか生き残るわれらがヒーロー   アイアムアヒーロー

2016-12-14 | 読書

アイアムアヒーロー/花沢健吾著(小学館)

 現在21巻まで続いている作品。ただし、僕が読んだのは20巻まで。映画化もされているし、なんとなく興味が出て買ってしまったらしい。レンタル落ちなので安かったし。でもまあ、相変わらず漫画というのは展開が遅い。活字ばかり読んでいる身としては、多少疲れてしまった。
 簡単にいうとゾンビもの。巷間では謎の通り魔咬みつき事件というのがなんとなく報道はされていた。漫画家アシスタント(デビューしたことはあるが食えないのでやっているようだ)をしている妄想癖のある男が、苦しみながらも仕事をし、同じ漫画家仲間の女性との恋愛をしている。そういうときにそういえばテレビの報道などで小さくやっていた咬みつき事件がとんでもない規模にデカくなって、咬みつき感染症の影響なのか、感染した人たちの大量ゾンビ化した世界に突入してまう。結局彼女は感染しており首を切って殺して逃亡。主人公はライフル射撃を趣味としており銃を持っている。ゾンビに襲われるサバイバル社会において、少なからぬ人間の身でありながら、事実上強者の立場にのし上がる。しかしながらゾンビの感染力は早く。見る見る人間社会は破壊されていく。治安維持のための暴力装置である警察や自衛隊は、どうも崩壊してしまったようだし、人々は自衛のための弱肉強食競争社会を、各地で小規模に展開し抵抗している。そういうさまざまな集団社会にもドラマがあり、主人公はそれらを渡り歩きサバイバルしていく。どうも感染しながら、完全にゾンビ化しない人々も少数ながら存在するらしく。同行していた女子高生もそのような稀有な存在らしい。彼女を何らかの医学的な調査をすることで、感染症の謎を解く(ワクチンなど)カギになるかもしれないと、さらに移動しながら奮闘するのだったが…。
 主人公の名前が英雄君。つまりヒーローとかけているらしい。絵は精密でしっかりしており臨場感のある展開だが、主人公は病的に(いや、すでに病気だろう)潔癖というか、小さいことにこだわりすぎるきらいがあり、いちいちイライラするような小さいことに引っかかって前に進めない。世の中がひっくり返るような大変なことが起こっていることは重々承知しながら、考えている世界は非常に小さい自分のこだわりだ。圧倒的に有利な立場を活かせることが出来ないし、しかし後で考えてみるとこの性格だから生き残ることもできたというのも伏線としてはある。男としてハッピーなところもあるかもしれない。弱肉強食社会では弱者である女というのは不利で、多かれ少なかれ性的な武器を使うより無いのかもしれない。そういう青年漫画的な展開はあるものの、それはそれで荒唐無稽ながらリアルさのある作品と言えるだろう。
 結末が近そうな予感のするところまで読んだが、クライマックスに何か作者に考えがあってとんでもない方法に行くかもしれない。これまで読んだ感想としては、やはり妙なこだわりがある人たちの考え方というのは、可笑しいけれど、あんがいそれは確かにそうだという当たり前のことの繰り返しなんだな、と思った次第。そういう意味では、臨床の人などが読んでも面白い作品かもしれない。
コメント
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