カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

大村線の風景の美しさ

2016-05-28 | 掲示板

 通勤の時に必ず見る大村湾の風景。天気が良くても美しいが、天気が悪くても美しい。ヒトはいい環境だからその場所に住んでいるようなところがあるとも思う。もちろん致し方ない事情や、仕事などの関係もあるのだが、基本的にはどこに住んでもいいわけで、そうすると、出来るだけ気分のいいところが良いに決まっている。実際のところ僕の場合はたまたまに過ぎないが、たまたまなのに美しい風景をほとんど毎日眺められる。それはいくつかは感じている仕合せの中のささやかなる一つのことだ。
 先日は天気が荒れて、海も大荒れ。だいたい大村湾というのはほとんど閉じた湾で、さらに水深も浅く、風が無ければ鏡面のように穏やかな海だ。琵琶湖より小さいので、琵琶湖よりも波が無い。ただ実際には湾だから、潮汐の関係で満潮と干潮がある。満潮時に例えば台風などが来ると、それなりに内陸に水が浸水するようなことがあるようだ。知人に千綿宿の人がいるが、荒天に海水を被るので、自転車などはすぐに錆びてしまうということだった。港近辺の人たちにとっては当然のことかもしれないが、やはり自然というのは侮れない。それでも比較的に穏やかな海である日の方が多い。暴れていたのが嘘のように、すぐに静かな水面に戻ってしまう。
 ところでここに鉄道の大村線が通っていて、撮り鉄とでもいうのだろうか、頻繁にカメラの趣味の人々が、この湾岸を走る列車を写真に収めている。特に花の季節や夕陽の夕景などを狙う人も多く、線路脇の高台などにカメラの三脚をしつらえて、列車が通るのを待っておられる。僕には特にそういう趣味は無いのだけれど、そういう趣味の人を集めるほどの美しさがある場所であることが、勝手に誇らしくもあるわけだ。
 鉄道エッセイで有名な宮脇俊三という人(すでに故人)が「最長片道切符の旅」(新潮文庫)という本を書いている。僕はそれにも大村線搭乗があるらしいことを知って(本の題名からいって当然だろう)、多少ウキウキしてその部分を読んだ。宮脇俊三は別にも読んだ記憶があり、日本の作家にしてはユーモアセンスがなかなか豊富で、どんな紹介のされ方をしているのか楽しみだった。唐津から伊万里、そして松浦線、平戸、佐世保と来て、いよいよ大村線を諫早まで下る。早岐、南風崎と戦後の引き上げ者には馴染みのある、しかしよその人には珍しい読みの地名の紹介があり、川棚、松原、大村、そして諫早に着いたら、乗り換えてさっさと佐賀に戻ってしまった。車窓外の風景などの詳しい記述はほとんど無い。それもそのはずで佐世保発時間が17時30分。さらに日付が12月の17日である。窓の外はほとんど暗くて、さらに田舎だから明かりさえ乏しかったのではあるまいか。
 せっかくの美しい風景も夜眼にはその価値が分かりえまい。宮脇にとっても読者の僕にとっても、残念なことだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする