カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

事実をもとにすると事実だと思いかねないが…   フォックスキャッチャー

2016-05-19 | 映画

フォックスキャッチャー/ベネット・ミラー監督

 アメリカでは誰でも知っているような有名な事件らしく、その事件の背景をドラマ化した映画らしい。後で調べてみると、やはり事実とは異なることも多いようだけれど、ドラマとしての異常性は、なかなか見どころの多い映画である。僕なんかは結末はまったく知らなかったので、なるほど、そうなってしまったのか、とそれなりに驚いてしまった。
 レスリングのオリンピック代表選手候補のマークは、特に生活が豊かなわけではないらしい。そういう中でトレーニングをもくもくと積んでいるのだが、ある時大金持ちから電話がかかり呼び出される。飛行機のファーストクラスの席と、自家用のヘリコプターで連れてこられた場所は、広大な敷地にお城のような大邸宅(この場所がいわゆる以前の貴族の遊びであるキツネ狩りの場所だったようで、映画の題名であることと、その練習チームをそのままフォックスキャッチャーとしていたらしい)。そこにはレスリング・コートまで設置されており、空いた部屋には自由に住んでいいし、給料も払うといわれる。もちろん言われるままに移り住むのだが、メダリストであるマークの兄もつれてくるように言われるが、兄のデイブの方は、家族との生活もあるし、一緒に移住することは断るのである(最初は、ということになるが)。
 徐々に明らかになっていくのだが、財閥デュポンの御曹司であるジョンは、ちょっとエキセントリックなところが強く、孤独で母親から認められたいというような欲求をいまだに抱いているような男だった。レスリングの経験もあるらしく、それが米国ナショナルチームを支援したいという動機でもありそうだが、武器の収集をし、警察の射撃練習なんかも敷地内でやれるようにしている。愛国心が強く、レスリングで金メダルを取ることで、自らも尊敬を集めたいというような欲求があるように見て取れる。
 ドラマの中では暗にほのめかしてあるけれど、ジョンは同性愛者であるような感じだし、要するに男同士のレスリングの絡みも、なんとなくエロティックなものが混ざるようなところがある。お金や権力にあらがえない人々と、やはりそのことに反発するような心情との緊張感があって、記録映画的な興味よりも俳優たちの演技合戦の方に力が入っていく感じだ。そのことが映画的にこの映画の評価が高くなったものだろうし、後から関係者からクレームがあがったことの原因だろう。要するに、事実とは違う記録映画(ふつう事実をもとにした映画は皆そうだけど)になっているのだろう。それは別に観る者には悪いことでは無いのだけれど、やはり娯楽として徹して観るような心構えは必要かもしれない。
コメント
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