大当たりの死・刑事コロンボ/ヴィンセント・マケヴィティ監督
宝くじが当たったらどうするか。そりゃあ舞い上がるにきまってるとは思うのだが、基本的にお金の使い方を考えることにはなるだろう。日本の宝くじだと5億程度で(サッカーくじだと6億があるが)、まあ億だから億万長者と言っていいかもしれないが、超金持ちという感じでもないのだけれど、このコロンボの話だと今の為替とは違うことを考えても30億くらいというからやはり凄い。そんなに焦らなくても一度当たったらおそらく一生億万長者だろう。そうであるならやはりかえって余裕が出るような気がしないではないが、それはやはり当たったことが無いから分からない。周りへの影響や金に関するトラブルの事を考えると、いかに秘密にしながら金を確保するかということにはなるのだろう。そういうことがシビアな問題で、当選金の6割以上は本人以外の人が使うといわれる現実の世界を考えると、大変に不幸な事態を想定することが、まずは肝要だと思われる。
被害者の青年もそういうことを考えて信頼できる筋に相談することにした。それが犯人の叔父さんであったということが不幸だった訳だが…。離婚手続きの最中だったから、まだ籍のある奥さんに配当金を渡したくない。そこで事業で成功しているように見える叔父さんの言うとおりに策を練ったわけである。ところがこの叔父さんはちょうど事業が行き詰っているところだったというさらに偶然が重なってしまったのだった。これはもう自分にも幸運が降ってわいたものと同じであるのだから、この甥を殺さなければならない。自分のアリバイを確保しながらさらに事故死に見せかけるトリックも思いついてしまったようだ。
コロンボに追い詰められていくさまが、なかなか上手な俳優さんという感じもした。大変な悪人であるのだけれど、まさにじわじわコロンボに苦しめられていく。むしろ最後に悪事が全部ばれてしまって、かえってすっきりしたことではなかろうか。
もし自分が当選金の相談を受けたらどうするであろうか。大変にうらやましいのは確かだが、殺して取り分を増やそうと思うものだろうか。その金があったら自分の傾いた事業が何とかなるとしたら…。さて、あんまり偽善ぶるのもなんだが、相談されること自体も何となく幸福そうじゃないね。僕は人殺しは御免だから、当たったとしても僕のところには来ないでもらいたいものである。