カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

まったく酷い話だよ   喜劇 にっぽんのお婆ちゃん

2013-05-17 | 映画

喜劇 にっぽんのお婆ちゃん/今井正監督

 これって喜劇とわざわざ銘打っても喜劇とは思えない内容だと思った。ほとんど絶望の風景。お婆ちゃんじゃなかったら、たぶんすぐに自殺しかねないいじめ問題だ(いや、だから死のうとしている訳だが)。もちろん風刺を利かせてデフォルメされている訳だが、思わず昔の日本人はなんてひどい人達ばかりなんだ、と思ってしまいかねない。今もひどいには違いないが、まだまだ老人が少数派だった時代はさらに過酷なことだったかもしれない。また、何となく楢山節考だって理解できる世代だったろうから、その悲惨な自意識というものだってあったことだろう。逃げているが逃げ場がない。逃げ場がないならもっと嫌な奴になるしかあるまい。負の連鎖がスパイラル状になっていく感じが凄まじかった。
 老人ホームには、当たり前だがお婆ちゃんの方が比率が高い。男より長生きするからという問題もあるが、結局家で世話を受けづらい環境があるせいではなかろうか。夫は妻が世話をする場合も多そうで、そうして夫に先立たれると自分はホームに行くということかもしれない。老人ホームは必ずしも仕方なく行くところでは無いとも思うが、仕方なく行かざるを得ない人が増えるというのは、やはり問題であろう。そのことを強いられる側の人々の象徴がお婆ちゃんであるなら、日本の幸福度を測るとき、お婆ちゃんを特にしあわせにできることが重要になるのではあるまいか。
 それというのも、結構しっかりしている人達ばかりである。これだけ達者なら、邪険にされなくてもよさそうなものなのに。いや、達者だからかえって困ることになるんだろうか。とにかく受け入れる環境が良くない。受け入れられない環境からの逃避と、折り合いのつけられない自分自身からの逃避と、二つの意味がありそうだ。つまるところ克服するにはさらに自分が強くなるより無いかもしれない。年をとっても過酷であるなら、人間の成長物語かもしれない。
 それで今の世は良くなったか? 映画に比して単純には答えられないが、何となく自信がない。自分がどうだというよりも、それを期待している国に対する信頼の問題かもしれない。僕は左翼で無いので、そういう社会が悪いからどうすべきだというつもりは毛頭ないけど、個人の問題意識だけで何とかなるものではやはりなさそうだ。日本は、政治的には老人が圧倒的に強い社会である。政策もだからかなり老人よりのものになっている。そうであっても何となく頼りない。たぶんそれは、誰もが本当には連携して頼れないという意識のせいだろう。先立つものをどうするか。安倍さんだけが頑張っても仕方のないことなんだろう。
コメント
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