カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

お勧め笑い本4

2012-07-17 | なんでもランキング
お勧め笑い本4

そう言えば小説でもいけるな、と思い追記。

○吉里吉里人/井上ひさし著(新潮文庫)
 ユーモアたっぷりに語られる内容は教養小説そのものなのだが、やはりなんともヘンテコで、そうしてどうしてなかなか壮大だったりする。やっていることは日本からの分離独立を企てるいわばクーデターという物騒なモノなのだけれど、数々の難題を文字通り頓知で乗りきろうとするところがサスペンス調でもあり一気に読めてしまう。また、考えてみると国家や農政など現在にも続いているさまざまな問題提起にもなっていて、笑いながら何となく深く怒りを込めて考えさせられてしまうのである。東北って強いんだな、という印象も残っていて、現在の視線から見ても示唆的な内容なのではなかろうか。

○瘋癲老人日記/谷崎潤一郎著(新潮文庫他)
 フェティシズムを真面目に書いているのかもしれないけれど、それがなんとも言えないユーモアに見えるというか、はっきりいってつい笑ってしまう。みんな悪くてみんないい、という感じもして、やっぱり誰もがしあわせなのである。僕がもう少し老人になったら、さらに奥深く味わい深く思うかもしれないが、そこまで人間が磨かれるかどうかは心もとない。別に憧れている訳ではないが、このような生き方が出来るだけで人間が幸福になれるかもしれないというアンチテーゼでもあるような気がして、なかなか恐ろしくもなるのである。

○クリスマスのフロスト/R.Dウィングフィールド著(創元推理文庫)
 なんだか無茶苦茶な構成に見えて収斂していくプロットは見事。だらしないのに何故か読む者にとっては心地よい人物であるのは、やはりどこか戦う人だからではないか。組織というのはさまざまな不条理を抱えながら個人を縛りあげていく。フロストはそういう抵抗勢力と戦う戦士なのだ。もちろんそれは自分に照らし合わせて応援している訳で、結果的にフロストが勝つのかどうかは秘密だけれど、どこかそういうところが痛快な感じがしてしまうのであろう。しかしながら周りにこんな人が実際に存在すると、やはり迷惑だと思うくらい僕らは狭量なのだということも、忘れてはならないのだとは思う。

もひとつおまけ。
○空中ブランコ/奥田英朗著(文春文庫)
 こんな医者が居るはず無いと思いながら、いや、いたら面白いのにな、という願望に変わって行くに違いない。少なくとも僕は、面白半分かもしれないが、こういう医者に治療を受けてもいいかもしれないとは思う。採血が苦手なので、やっぱり無理かな。
 連作読みきりになっており、その一つ一つの完成度も高い。笑いながら読んで精神浄化もされだろうから、二度お得という感じもする。軽く読んでも深く読んでも可笑しいものは可笑しくて、読み終るのが悲しい作品なのである。

コメント
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