カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

おろしや国酔夢譚

2012-02-08 | 映画
おろしや国酔夢譚/佐藤純彌監督

 江戸時代に船で漂流し、ロシヤのカムチャッカのある島に漂着してしまった人たちの苦労話であった。日本に帰りたいが船も大破しどうしようもない。仕方が無いのでさらに、北上し、そうしてロシアの王女に接見し帰国の許可を得ようと旅をする。遭難で乗り組員を失い、漂着後も病気で次々に仲間が倒れていく。そういう困難の中、現地の女性と暮らしていく決意を固めるものや、キリスト教に染まり邪教となったので帰ることを断念するものもあったりする。本当に帰ることが出来るのかはまったく未知数だし、そういう絶望感の中、わずかな期待のみで壮大な移動を繰り返していく。実話をもとにした小説が元になっているらしいが、多少の省略はあるにせよ、このようなことがあったとは驚きである。
 時代が時代なので、日本に帰ろうにも、日本の江戸幕府がロシアに渡った(遭難だとしても鎖国中なので)者を簡単に受け入れるとは限らない。なんだか巣から落ちた雛を拒絶する親鳥のようなもので、帰りたい者にとっては残酷な状況である。ただでさえ過酷な自然状況もあるし、何しろロシアという国は広大だ。移動に次ぐ移動は命がけのサバイバルなのである。
 そういう訳でなかなか面白かったのだが、この映画の存在はまったく知らなかった。考えてみると僕が留学中に公開されていたようだ。かなり事情は違うんだけど、僕も帰りたかった時期があったもんなあ。何が何でも日本がいいということでは無いんだけど、自分の意思で無く漂流してしまった人なら、そういう執着がさらに強くて当たり前なのかもしれない。
 ふと、北の拉致被害者のことを思い出してしまう訳だが、このような個人の努力ではどうにもならないだろう状況を思うと、同情を通り越してなんとも言いようがない。残り時間は限りなく少なくなっていて、その上時間切れの人だって相当居ることだろう。国が人々を縛るというのは、本当に残酷なことである。それは単に昔の話だったでは済まないことなのではなかろうか。
コメント
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