千の天使がバスケットボールする

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名前のないうさぎ

2005-01-16 17:34:58 | Nonsense
1972年当時、公開されたときは猥褻な映画というレッテルが貼られて裁判沙汰にもなった「ラストタンゴ・イン・パリ」を先日ビデオで観た。今となっては猥褻な部分はどこかという期待?をはずされるような、猥褻というよりも人の救いようのない孤独を描いた映画だった。

妻に自殺された中年のアメリカ人(マーロン・ブロンド)が異国のパリ、アパート探しで出会った若い女性(マリア・シュナイダー)と、肉体との交わりだけのつながりを黄昏色に染まった殺風景なアパートで繰る返していく。ただそれだけの映画なのである。浴室で血まみれになった妻の思い出がよみがえったりもするが。部屋の家具もない、会話もない、お互いの名前も知らない、いや知る必要がないのである。
少々暴力的な性行為のみが二人の存在を認めているだけだから。深い絶望を感じる孤独をマーロン・ブロンドが見事に演じている。
最後に、性行為の対象としてでなく、男がはじめて若い女性に近寄り、名前を尋ねた時に悲劇が訪れる。

この映画を観るまでは名前とは、他人と区別するラベルのようなものと生意気にも考えていた。だから○○Aでも、××Bでも名前は本人を識別できればそれでよいとずっと思っていた。そんな私だから、最後のシーンだけでこの映画は大きな衝撃を与えられた。

まめ吉という、現在テトラヒメナの細胞質分裂におけるあるたんぱく質の役割を研究している大学生がいる。まめ吉から高校時代、将来生物の研究をしたいと聞いた時、一番心配したのが生物は実験でマウスなどの生き物を研究と称して、遺伝子操作したり、命を絶つ行為を行なう場合があり、そういう必要がある局面に立ったとき本当に実行できるのかということだ。
年末から血液で抗体をつくるためにうさぎを研究室で飼っていると聞いた。

抗体をつくったら、うさぎはどうなるの?
>一滴残らず血液を抜く
・・・血液を全部抜いたらうさぎは死んじゃうよね
>悩んだけれど研究のためには仕方がない
・・・うさぎに名前はあるの?
>名前をつけたらできなくなるから、イ号、ロ号として区別している

名前をつけたら情がわく。名前をつけたら生き物の命の尊厳の前にたちすくんでしまうだろう。そんな実験がいつか役にたつ日がくることを願うばかりであるが。
名前のないうさぎは、今日別の世界へ旅たつらしい。

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