「純粋に会社が憎い」
こう富士通の中堅エンジニアは言った。彼は通常勤務の時期は意図的に残業時間を増やし、裁量労働制になるや夕方には退社するというサイクルを数年続けていた。別に残業代が欲しいわけではない。残業時間の多いものは裁量労働制を適用、少なければ不適用、毎年春に上司と面談して前年の残業実績で決めるやり方を「詐欺に近い」almost trickというのが彼の主張だ。
サラリーマン生活の経験のある者は、多少なりとも会社に理不屈さの悔しさや処遇に不満をもったことはあるのではないだろうか。しかし憎悪まで抱かせるのは、よほどのことだろう。
1973年生まれの著者の城繁幸氏は東京大学卒業後、成果主義performance-based pay systemを素晴らしい制度と先輩から説明され、自分の実力で将来を開けると信じて富士通に入社した。ところが希望どおりの人事personnel managementの仕事に従事して、見て聞いて、知りえた外資系経営コンサルタントによって導入された成果主義は、様々な点で問題があり、ついに日本のリーディングカンパニーleading company をなかば崩壊collapseさせるに至った。
本書は、かなり話題になり、また多くの読者に読まれている。成果主義という制度を何らかの形で取り入れている会社がすでに7割に及ぶこと。年功序列seniority-based system世代と新世代が混在している点で成果主義の導入によってきしみが生じやすい懸念。評価が給料pay、つまり生活にダイレクトに反映される不安。会社生活をおくる者にとって関心が高いことを示しているのであろう。
ここでどのような問題が噴出して、その結果富士通がどのような事態に陥ったのか、そのすさまじい実態を解説してもあまり意味がない。すでにこの本の存在によって成果主義が見直されはじめているし、我々も成果主義というモチベーションを高めてくれそうな言葉の裏に、人件費を抑えるためという内実も知りつつある。それよりも著者自身が言っているように日本型の成果主義を模索すべきなのであろう。そこに単なる暴露本とは違う、「人間は未来にために働いている」という哲学があるからである。
余談だが光文社のこのような英語交じりの「4重表記」というのもどうなのであろうか。読みにくいだけで、あまり意味がないと思うのだが。
その後、冒頭で紹介したエンジニアはどうなったのか。勿論、退職した。嫌気がさしたからではない。きっかけは課長昇級の話がきたからだ。「評価されるのはありがたいが、自分が課長になって詐欺の片棒を担ぐのは、もっとイヤだから。
この季節、通勤電車の中でいかにもリクルート活動中という感じの大学生を見かける。彼らが、能力のある者はそれを存分に活かせる会社、そこそこの者にとっては働くことの喜びと達成感の味わえる会社、そんな会社に就職することを願ってやまない。
さて、あなたの会社では「目標管理制度」なんて導入していない?

こう富士通の中堅エンジニアは言った。彼は通常勤務の時期は意図的に残業時間を増やし、裁量労働制になるや夕方には退社するというサイクルを数年続けていた。別に残業代が欲しいわけではない。残業時間の多いものは裁量労働制を適用、少なければ不適用、毎年春に上司と面談して前年の残業実績で決めるやり方を「詐欺に近い」almost trickというのが彼の主張だ。
サラリーマン生活の経験のある者は、多少なりとも会社に理不屈さの悔しさや処遇に不満をもったことはあるのではないだろうか。しかし憎悪まで抱かせるのは、よほどのことだろう。
1973年生まれの著者の城繁幸氏は東京大学卒業後、成果主義performance-based pay systemを素晴らしい制度と先輩から説明され、自分の実力で将来を開けると信じて富士通に入社した。ところが希望どおりの人事personnel managementの仕事に従事して、見て聞いて、知りえた外資系経営コンサルタントによって導入された成果主義は、様々な点で問題があり、ついに日本のリーディングカンパニーleading company をなかば崩壊collapseさせるに至った。
本書は、かなり話題になり、また多くの読者に読まれている。成果主義という制度を何らかの形で取り入れている会社がすでに7割に及ぶこと。年功序列seniority-based system世代と新世代が混在している点で成果主義の導入によってきしみが生じやすい懸念。評価が給料pay、つまり生活にダイレクトに反映される不安。会社生活をおくる者にとって関心が高いことを示しているのであろう。
ここでどのような問題が噴出して、その結果富士通がどのような事態に陥ったのか、そのすさまじい実態を解説してもあまり意味がない。すでにこの本の存在によって成果主義が見直されはじめているし、我々も成果主義というモチベーションを高めてくれそうな言葉の裏に、人件費を抑えるためという内実も知りつつある。それよりも著者自身が言っているように日本型の成果主義を模索すべきなのであろう。そこに単なる暴露本とは違う、「人間は未来にために働いている」という哲学があるからである。
余談だが光文社のこのような英語交じりの「4重表記」というのもどうなのであろうか。読みにくいだけで、あまり意味がないと思うのだが。
その後、冒頭で紹介したエンジニアはどうなったのか。勿論、退職した。嫌気がさしたからではない。きっかけは課長昇級の話がきたからだ。「評価されるのはありがたいが、自分が課長になって詐欺の片棒を担ぐのは、もっとイヤだから。
この季節、通勤電車の中でいかにもリクルート活動中という感じの大学生を見かける。彼らが、能力のある者はそれを存分に活かせる会社、そこそこの者にとっては働くことの喜びと達成感の味わえる会社、そんな会社に就職することを願ってやまない。
さて、あなたの会社では「目標管理制度」なんて導入していない?
先日はコメントをありがとうございました。
いま、パキスタンにおります。明日、最終取材地アフガニスタンに向かいます。今日一日は、ぽっかり真空地帯となり時間がありますので、ゆっくりブログを拝見させていただきます。
明日からは、8年ぶりのアフガニスタン。
97年のタリバーン政権時代は、安心してカメラをぶらさげて写真を撮ることができましたが、今回はそうはいかないようです。一人で歩き回るのは、危ないから気をつけるようにと、こちらにいるアフガニスタン人から助言されました。気を引き締めて行ってきます。戻りましたら、また拝見させていただきます。
では、また。
イスラマバードにて。
私の方こそ4月6日の旅たちのブログを読んだのが、足跡を残した後で失礼いたしました。
どうかくれぐれもお気をつけていってらっしゃいませ。
現地を歩かれた方ならではの説得力のあるご報告と世界観を待っております。
余談ですが、中司さまはこのコメントをいただいたブログの場所、富士通成果主義うんぬんの内容とは、ほど遠い景色にいらっしゃるのですね。
先日はTBありがとうございました。
この本とは関係ありませんけど、私もクラシック音楽が好きなので(最近はかなり遠ざかっているんですけど・・・)、ブログを興味深く拝見いたしました。
またおじゃまさせていただきます。
音楽の専門的な知識がないのがちょっとくやしく残念ですが、私にとってはこだわりのカテゴリーです。
ところで、「仁義なき英国タブロイド伝説」はおもしろそうですね。英国は階級社会で読む新聞も所属するクラスによって違うとか。労働者階級の人々が読む「タブロイド魂」から、もうひとつの英国気質が読み取れそう。
コメント&TBどうもありがとうございます。
今年は、就活も買い手市場から売り手市場に変わり、以前のような就職氷河期は脱したのではないかと感じています。
企業もバブル崩壊後封印されていたリクルーター制度を復活させているようです。特に金融業会は熱心ですね。赤、青、緑・・・
ただ、企業も数合わせの人材は採用しないようで、学生も見事に「勝ち組負け組み」に二極化しています。
就活も実力主義が徹底されるようになったのかもしれません。