千の天使がバスケットボールする

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もうすぐセンター試験

2007-01-16 23:02:32 | Nonsense
今週末にかけて大学入試センター試験が実施される。
もうそんな季節かと、不図感慨深くなる。センター試験が導入される以前、1979年~89年の間国立大学で入学志願者を対象に、共同で基礎学力を実施した共通試験なるものが存在した。大学教育において個性と多様化の人材を求める一方、受験戦争の緩和目的の共通試験導入ではあるが、平均的に高得点をとれる優等生タイプの受験生の方が有利という点で、当時は賛否両論のあったのではないだろうかと推測する。その共通一次試験が実施された最初の入学試験の時、当時現役高校生として受験会場にいた人物がいる。彼は、なんと受験のあいまに休憩時間になる度に「共通試験反対!」というプラカードをもって校門にたち、マスコミにアピールをしたという武勇伝がある。現在のセンター試験でもそうだが、基礎学力を試すとはいいつつも、いかにミスなく、時間内に要領よく高得点を稼ぐかがポイント。難関大学の一部には、センター試験は足切り程度にしか利用されていないことから、そのようなセンター試験のあり方をあまり考慮していないのかだろう。

しかしこのような共通の試験導入の80年代から受験合理主義がはじまったと指摘しているのが、予備校の感想である。
昨年高校の必修科目の履修漏れが全国的に蔓延しているのが発覚した。河合文化教育研究所の主席研究員である丹羽健夫氏は、こうした事態に「やっぱり」という感じもしたそうだ。
かっての予備校では、高校で教科の本質を教わり、教科に対して畏敬の念すら抱き学習意欲のある生徒たちに、入試問題の解法を教えるという醍醐味を味わった。しかし難関大学の合格者数の競い合いや教育委員会からの受験実績による補助金の多寡の変動を通告されたりして、やがて高校側でじっくり教科の本質を教える余裕がなく、正解をひねるだすための記憶ドリルの作業場に変質した。しかも中高一貫教育校の方が受験には有利ということで、大都市圏では名門公立高校が地盤沈下している現象も、受験合理主義のあらわれだろう。それは明確に、受験生気質を変質させた。
高校時代の”0”を、いつも”ジェロ”と発言したある数学の教師を思い出した。その教師は単に数学を解くだけでなく、ご本人の面相とは離れた”エレガント”な解き方にこだわった。
丹羽健夫氏によると似たような教師がどこにでもいるもので、ある予備校講師はひとつの問題で別解を6つもだし、最後に「これが一番エレガント」とやってみせると教室中が興奮に包まれ拍手がわいたそうだ。しかし、有名なこのエレガントな教師はやがて辞表をだして教壇を去ることになる。
というのも、ある日クラス代表という生徒3人がやってきてこう訴えた。
「別解をいくつもだすのは止めてください。頭が混乱します。一番簡単なやつをひとつだけ教えて下さい。僕らは大学に受かることが目的ですから」

そのそも予備校なのだから、大学に受かるためだけのテクニックを教えればよいのだろうか。本来その存在そのものに疑問すらもつ受験産業の予備校側で、教育の本質を嘆くこと事態お門違いなのかもしれない。また共通試験やセンター試験のおかげで受験産業もうるおう部分もあるはずだ。しかし、このような教科の本質をおきざりにして受験合理主義への実態は、数学という教科だけではなく、高校全体にひろがっているからこそ発生した今回の履修漏れであるという予備校側の指摘は正鵠をえている。
教師の立場としても、本質追求型の授業はエネルギーも準備も大変だ。それに比較して正解追求型は単純で楽だ。大学合格という明確な目標は、ゲーム感覚でも高校生のモチベーションを維持できる。かくして受験テクニックに邁進するこどもたちの方が、受験の勝利者となっていくのだとしたら、いかにも残念である。
ところで「共通試験反対」のプラカードで抗議をしたかっての憂国の士である高校生は、無事志望の難関大学に合格し、いまや某予備校の有名な講師である。ちょっと変わった人物らしいのだが、生徒に人気抜群で指導の実力もある。但し、彼がセンター試験対策の講座をもつことはない。

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4 コメント

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Unknown (econ-econome)
2007-01-17 04:02:07
もうセンター試験の季節なんですね。結構過去獲得した知識がどこまで忘却の彼方に去っていったのかを確認する目的には良い試験問題だと思います(笑)。本来物を知ることは楽しいことだと思いますが、手段としての勉強ほど無意味なものはないですね。そして大学に入ってからも手段としての勉強を続ける人の多いことといったら・・・。悲しいことです。
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econ-economeさまへ (樹衣子)
2007-01-17 22:02:16
>結構過去獲得した知識

んっ!?さすがに高得点をマークしていたのですね。
私も時々センター試験には目を通しますが、やっぱり国立大学をめざす人は大量の勉強量があいかわらず必要かもです。

>手段としての勉強ほど無意味なものはないですね

受験勉強も学力アップにつながるならそれも一概に悪いとは思いませんが、効率化と合理化のために本来の学ぶ楽しさを失ってしまったら不幸です。経済学の立場からものごとを考えると、なにごとも効率化と合理化は必要なことではありますが。私も”モデル”は、好きですし。。。

>手段としての勉強ほど無意味なものはないですね

手段でも勉強すればまだましかもです。^^!嗚呼、もっと大学時代勉強すればよかった・・・。(恥)

>物を知ることは楽しいことだと

そうですよね、学問は楽問だったはず。

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Unknown (econ-econome)
2007-01-18 01:14:04
>結構過去獲得した知識

すみません。結構~がかかる部分が一番最後の方の「良い問題」でして、樹衣子さんのお考えのようなことでは決してありません(泣。無理やりする勉強はやはり辛いのでどうしてもあれこれと考え込んだり&勉強しない屁理屈を考えることに時間をかけていたような気がします。

西部邁氏の本を昔読んだときに「大学受験で勉強した知識」をずっと保持していれば十分な教養者とみなせるだろう云々といった文章がありまして、それ以来出来るだけ理解できるように努力しているつもりですが・・はてさて。

楽問は良いですね。

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日々是勉学(楽) (樹衣子)
2007-01-19 00:09:06
>無理やりする勉強はやはり辛い

私も苦手です。勉強しなければならない状況になればなるほど、逃げたくなる。働くようになって、結局プレッシャーに弱いんだということがわかりました。

>「大学受験で勉強した知識」をずっと保持していれば十分な教養者

そこまでの受験勉強できなかったから、今教養を見につけるべく動いています。頑張れ、自分。

>西部邁氏の本

嗚呼、意外な作家ですね。「友情」はすごくよかったです。ブログも書いたのでついリンクなぞ・・・↓。
http://blog.goo.ne.jp/konstanze/e/8ca110938a711b173e319635b1ac5ae0
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