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『ミケランジェロの暗号』

2011-09-23 17:27:37 | Movie
この映画の宣伝チラシには、”『ヒトラーの贋札』のスタッフが贈る謎と緊張が連続するサスペンス・ミステリー”という言葉が踊っている。
ちょいヒットで話題となり好評をはくした前作の実績をみせて、次の作品の観客動員につなげたいという製作側の思惑というのもよくわかるのだが、この『ミケランジェロの暗号』こそ、前作の『ヒトラーの贋札』とあわせて鑑賞するのがお薦めである。もっとも、その点で一番笑っているのは、もしかしたら贈り主のスタッフかもしれない。

『ヒトラーの贋札』の舞台は、第二次世界大戦中の、ドイツはザクセンハウゼン強制収容所。ナチス・ドイツが英国経済の混乱を狙って大真面目に考えついたのが、大量の贋札ポンドを製作するベルンハルト作戦だった。前作では、ナチス側が収容所に入れた優秀なユダヤ人の頭脳と技術を巧みに利用して贋物の紙幣を作っていたのだが、今回はそのユダヤ人がミケランジェロの絵の贋物をこっそり製作して、その絵を切り札にして外交上でイタリアとの優位な条約を結ぼうとしていたナチスを逆に翻弄させるという展開である。 しかも、ユダヤ人画商一族、カウフマンの御曹司ヴィクトルが使用人でナチスに入党したルディをだまして立場を入れ替わり、どちらが本物のユダヤ人のヴィクトルでどちらが偽者のナチス党員のヴィクトルなのか、はらはらどきどきさせるサスペンス映画である。(以下、内容にふれてまする。)

ユダヤ人画商の一族、カウフマン家は国宝級のミケランジェロの絵画を密かに所蔵していた。それはムッソリーニもだが、私だって欲しいぞ、国宝級の一枚。一族の御曹司ヴィクトル(モーリッツ・ブライドブトロイ)は、パーティの後に幼なじみで親友のルディ(ゲオルク・フリードリヒ)にその秘蔵の絵の在り処をこっそり教えてしまう。するとルディはナチスでの昇進のために恩義のあるカウフマン家を裏切って軍に密告。一家は、絵を奪われて収容所に送られてしまう。ところが、その名画が贋作だったことが判明した。すべてを知る一家の父はすでに収容所で死亡、鍵を握るヴィクトルは・・・。

たいした宣伝もしていないし、マイナーな映画鑑賞が多くいつも空席だらけの経験則から、どうせ空いていると踏んでいた私は甘かった。すでにほぼ満席で、日を改めて早めに到着して鑑賞したくらいの人気にわく。これまで毎年、なんだか気がついたらナチスもの、アウシュビッツが舞台といった映画を観てきたことになるが、本作はこれまでの映画と雰囲気が異なる。超濃口顔のモーリッツ・ブライドブトロイが、意外にも人がよくユーモラスなお坊ちゃま役を好演している。一方、辛口顔のゲオルク・フリードリヒは、ナチスの軍服が似合う怜悧なタイプなのに、どこかまぬけでにくめないのである。友人同士とはいえ、片や一族の御曹司へのコンプレックスをお茶目に演じている。裕福な御曹司と貧しい使用人という対立する立場が、政局によって、支配するナチス党員と収容所の囚人扱いに逆転したかと思うと、ヴィクトルの機転で制服と囚人服をチェンジするや、再びふたりの立場が逆転。まるでオセロの白と黒のように情勢が一気に反転していくゲームのように物語は進行していく。ナチス党員の制服は究極の万能スーツ。人は身に着ける制服と立場によって、これほどふるまいを変えることができるのか。なんだか、カイシャで出世できないおとうさんの哀愁がちょっぴりわかる・・・。それはさておき、何度も笑って最後の最後まで、絵画の行方とふたりの動向から目を離せない。そう、主役はミケランジェロの絵画ではなく、このふたりのパワー・バランスだ。ラストの戦いが終わったふたりの複雑でなんともえいない表情が、原題の意味に集約される。ナチスものでも、こういう映画を撮るのだと懐の深さも感じた。

原題:Mein bester Feind
監督:ウォルフガング・ムルンベルガー
2010年オーストリア製作

■アンコール
映画『ヒトラーの贋札』
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2 コメント

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そうですそうです (KLY)
2011-09-23 22:54:02
仰るとおり!あのラスト、あの表情こそが原題そのものなんですよね。演じている2人もそこを見事に表現できていた訳で。ああ、返す返すも邦題ははずしちゃってるなぁ(苦笑)
KLYさまへ (樹衣子)
2011-09-23 23:29:00
コメントをありがとうございます。
いつも「LOVE Cinemas調布」の更新を楽しみにしています。
邦題については、『近距離恋愛』など座布団をあげたくなるような秀逸なタイトルもみかけますが、今回のは完全に残念な・・・、、、でしたね^^
映画は期待以上でしたが。

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