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中国映画の巨匠、謝晋監督が死去

2008-11-21 23:12:44 | Nonsense
【北京18日共同】中国の文化大革命の苦難を描いた映画「芙蓉鎮」(1987年)などで知られる中国映画界の巨匠、謝晋氏が18日、浙江省紹興市上虞で死去した。84歳だった。 新華社電によると、母校の中学校の100周年記念式典に参加のため上虞のホテルに宿泊中、室内で死亡しているのを従業員が発見した。死因は不明。心臓病を患っていたとされる。
「最後の貴族」(89年)「乳泉村の子」(91年)「阿片戦争」(97年)など、中国の曲折した歴史を題材にした作品が内外で高い評価を受けた。
23年、上虞生まれ。南京国立演劇専門学校を卒業した。94年には中国初の私立の映画俳優養成所「上海謝晋・恒通スター学校」を設立、人材育成にも尽力した。
黒沢明監督の影響を受けたとされ、80年に中国映画代表団として訪日。2006年12月にも映画祭参加のため訪日しており、日本映画界との交流も多かった。(08年10月8日西日本新聞)


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1963年のことだった。湖南省の片田舎、芙蓉鎮では米豆腐を売る胡玉音(劉暁慶)の店は大繁盛していた。

それもそのはず、家畜用にしかならないくず米を夫とふたりで夜遅くまで臼を挽いて美味しい米豆腐を作って売っていたのだ。働き者で努力家。おまけに若い夫婦は、あかるく気立てもよく年寄りにも優しい。繁盛しないわけがない。ところが、時は文化革命の嵐が吹き荒れる時代。彼らの幸福を妬む政治工作班長によって「資本的ブルジョワジーの典型」と批判され、家も没収され夫も処刑されてしまったのだが。。。

随分前に観た映画なのだが、今でも主役を演じた劉暁慶の愛らしさが鮮明に印象に残るが、なんと言っても一種のカルチャー・ショックを受けたのが、活字でしか知らなかった中国の「文化大革命」の実態である。この映画で初めて知った「文化大革命」は、その無意味な”革命”に恐ろしさすら感じた。同じく映画の『中国の小さなお針子』ではあきれるくらいの実態に笑うしかなかった「文革」も、先日読んだ小説「兄弟」では、その理不尽な残酷さをシュールなまでに描写されている。現代人にとっては、中国の文革は理解不能な特殊な現象である。

監督の謝氏はフランスで書店めぐりをした時に、映画の原作である作家、古華の『芙蓉鎮』がヤマ積みになっていることから、国外では文革に高い関心が持たれていることに気づき、映画化の構想を練ったという。「文革のような出来事が中国で再び起きることは絶対に許さない。それが私の主要テマだ」というのは、自身も「牛小屋(知識人らの収容所)」に押し込められ労働を強いられた経験をもつ謝監督の信念である。文革終結後、わずか10年後で『芙蓉鎮』で製作されたのだが、やはり党内で激しい論争があり、上映禁止寸前だったそうだ。

その『芙蓉鎮』が世に出る7年も前に、北京で個人経営の食堂が小平の改革・開放で復活した。国ぐるみで”資本家”を絶滅させた後、生活苦から逃れるためにひっそりと開業した小さな店「悦賓飯館」を81年の旧正月に訪問した客は、副首相ら共産党、政府の幹部だった。文革の記憶が鮮明だった開業当時は、従業員も雇えず薄利に徹して料理の値段を決めていた店主だったが、彼らお偉いさんの訪問で安心して商売ができるようになったという。『芙蓉鎮』では、身重の胡玉音が雨にずぶぬれになりながら夫とともに公開裁判で懲役を言い渡される。

「生きぬけ、豚のように生きぬけ、牛や馬のように生きぬくんだ!」夫は、妻にそう叫んだ。

政治が変わり、たとえもまれてもただただ生き抜くことさえできれば、やがて平穏な暮らしが戻ってくる希望もある。政治の虚しさと下々の庶民のたくましさといとおしさを鮮烈に描いた謝監督の母親は、知識人への迫害が増すさなか、睡眠薬を飲んで自殺し、父親も身投げをした。
豚肉炒めと卵ソバの値段が合計24元(350円程度)のその店は、今でも繁盛しているという。

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2 コメント

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Unknown (waremokmou)
2008-12-04 21:49:16
カタルシスのあるストーリーでした。恋愛映画としても十分機能していました。大好きな映画の一つです。
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お久しぶりですね (樹衣子)
2008-12-06 22:30:14
この映画ご覧になってらっしゃいましたか。
私にとっては、中国映画にめざめたきっかけになった記念すべき映画でした。撮影当時から20年。可憐だった劉暁慶も、今では実業家だそうです。
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