「彼になにかあれば、私にはわかるはず」という不思議な“直感”を信じ、戦死したと伝えられた婚約者マネクを探す20歳のマチルド。私立探偵を雇い、顧問弁護士の協力をえて、少しずつ真相に近づくそのたびに彼の生存は絶望的になるのに、不自由な脚をひきずりながらマネクへの道のりをひたすら歩く旅。
「アメリ」の監督ジャン=ピエール・ジュネが再びオドレイ・トトゥを主人公に迎え、ベストセラー小説『長い日曜日』(Sebastien Japrisot)を映画化したフランスでも多くの観客動員数を誇る話題作である。春の訪れとともにロードショー初日、初回に足を運ぶのは気分がいいものである。いつものとおり開演ぎりぎりに飛び込み、混んでいたらどうしようという心配がひょうしぬけするくらい場内はがらがらだった。考えてみると「アメリ」は大ヒットしたが、もともとは幅広い年齢の大衆向け百貨店というよりも、裏原系のブティック向けの既存のものにあきたらないちょっと小技のきいた趣味的な作品だ。「ロング・エンゲージメント」も銀座の大きな映画館よりも渋谷の単館にふさわしいともいえる。
時は第一次世界大戦、幼なじみで友人で、恋人でもある婚約者マネクは戦場へ旅立った。映画の冒頭は、激しい驟雨の中のリアルな戦場を舞台に、軍法会議によって死刑に処せられる兵士の素顔を紹介していく。5人目のひときわ若い兵士、それがマネクだったのだ。彼は、初めて抱いた時のマチルダの胸の鼓動を刻んでいる手に向けて、自ら銃を放つことによって負傷して戦争を回避しようとするのだが、無情な大佐によって死刑を宣告され「ビンゴ」と呼ばれる独逸と仏蘭西の中間地点の戦場に向かっているのだ。まるで地獄のようなこの地で5人の兵士たちは、武器ももたず雨のような爆弾や銃をあびて次々と倒れていく。
二人の秘密の暗号、海辺の荒れる風と灯台、小さなユーモラスとグロテスク、ジャン=ピエール・ジュネ監督が好きな方には最後の結末まで含めて期待は裏切られないだろう。
そしてここまでリアルに描く必要があるのかと疑問さえもってしまう残酷な戦場の映像と一転して、マチルダが一心にマネクを思いながら探す場面はこの監督独特のセピア色の映像美に包まれている。戦争の残酷さと平和な海辺の養父母とのマチルダの暮らし。その対比をかたやリアルな音とともに灰色に、他方では緻密な小道具を配置した懐かしい完璧な様式美に描いたこの監督に、いまどきのフランス映画のエッセンスをきく。
ジュディ・フォースターが脇役を演じているのだが、驚くほど存在感があった。こんな女優に成長していたのだと改めて思った次第である。
それにしてもマチルド役を演じたオドレイ・トトゥをジュリエット・ビノシュに似ていると感じているのは私だけだろうか。フランス人はこういう雰囲気の女優が好きなのだろうが、どうみても20歳には見えないのが惜しい。むしろマネクを演じたギャスパール・ウリエルが実に役柄にぴったりだった。 「かげろう」で演じた青年といい、こういう無垢な若者は今は彼以外に考えられない。「歩くと脚が痛いの?」こういうセリフがいえるのは彼だけだ。
オトナの自覚がある方にはお薦め。無花果を食した気分かも。
二人が初めての夜をともに過ごすときのマッチを一本ずつ擦る場面だけで、映画のチケット代に値する。
「アメリ」の監督ジャン=ピエール・ジュネが再びオドレイ・トトゥを主人公に迎え、ベストセラー小説『長い日曜日』(Sebastien Japrisot)を映画化したフランスでも多くの観客動員数を誇る話題作である。春の訪れとともにロードショー初日、初回に足を運ぶのは気分がいいものである。いつものとおり開演ぎりぎりに飛び込み、混んでいたらどうしようという心配がひょうしぬけするくらい場内はがらがらだった。考えてみると「アメリ」は大ヒットしたが、もともとは幅広い年齢の大衆向け百貨店というよりも、裏原系のブティック向けの既存のものにあきたらないちょっと小技のきいた趣味的な作品だ。「ロング・エンゲージメント」も銀座の大きな映画館よりも渋谷の単館にふさわしいともいえる。
時は第一次世界大戦、幼なじみで友人で、恋人でもある婚約者マネクは戦場へ旅立った。映画の冒頭は、激しい驟雨の中のリアルな戦場を舞台に、軍法会議によって死刑に処せられる兵士の素顔を紹介していく。5人目のひときわ若い兵士、それがマネクだったのだ。彼は、初めて抱いた時のマチルダの胸の鼓動を刻んでいる手に向けて、自ら銃を放つことによって負傷して戦争を回避しようとするのだが、無情な大佐によって死刑を宣告され「ビンゴ」と呼ばれる独逸と仏蘭西の中間地点の戦場に向かっているのだ。まるで地獄のようなこの地で5人の兵士たちは、武器ももたず雨のような爆弾や銃をあびて次々と倒れていく。
二人の秘密の暗号、海辺の荒れる風と灯台、小さなユーモラスとグロテスク、ジャン=ピエール・ジュネ監督が好きな方には最後の結末まで含めて期待は裏切られないだろう。
そしてここまでリアルに描く必要があるのかと疑問さえもってしまう残酷な戦場の映像と一転して、マチルダが一心にマネクを思いながら探す場面はこの監督独特のセピア色の映像美に包まれている。戦争の残酷さと平和な海辺の養父母とのマチルダの暮らし。その対比をかたやリアルな音とともに灰色に、他方では緻密な小道具を配置した懐かしい完璧な様式美に描いたこの監督に、いまどきのフランス映画のエッセンスをきく。
ジュディ・フォースターが脇役を演じているのだが、驚くほど存在感があった。こんな女優に成長していたのだと改めて思った次第である。
それにしてもマチルド役を演じたオドレイ・トトゥをジュリエット・ビノシュに似ていると感じているのは私だけだろうか。フランス人はこういう雰囲気の女優が好きなのだろうが、どうみても20歳には見えないのが惜しい。むしろマネクを演じたギャスパール・ウリエルが実に役柄にぴったりだった。 「かげろう」で演じた青年といい、こういう無垢な若者は今は彼以外に考えられない。「歩くと脚が痛いの?」こういうセリフがいえるのは彼だけだ。
オトナの自覚がある方にはお薦め。無花果を食した気分かも。
二人が初めての夜をともに過ごすときのマッチを一本ずつ擦る場面だけで、映画のチケット代に値する。
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この映画は本当に意外な部分が多かったのですが、個人的には苦手なシーンが多く疲れました^^;
私の連れもオドレイはどう見ても20歳には見えない!と豪語しておりました(笑)
最初の謎解きの場面は難し過ぎてついていけない感じでした。
フランス人には馴染み深いであろう登場人物の名前も日本人の私にとってはちょっと覚えにくいものがありましたね…
この作品を観終わった後に「またアメリを観てほっと一息つきたい!」と思いました。
残酷なシーンがけっこう多かったのは甘いラブロマンスに、毒と悲惨を盛り込むことで作品により個性と芸術・趣味性をもたらす効果をねらっていたのではないでしょうか。
たまたま昨日、ランチタイムにフランス映画はわかりにくくて嫌い派の意見も聞きましたが、私はフランスをはじめとするヨーロッパ映画が好きです。人生の深淵にのみこまれそうな危うさにひかれるのかもしれません。
この映画は確かに単館系ですよね・・・王家衛の『2046』のときもそう思いましたけど。そしてオドレイ・トトゥはジュリエット・ビノシュに似てる、のお言葉にはポンと膝を打ってしまいました。
樹衣子さんのブログは、とても読み応えがあります。これからも拝読しに伺いますので宜しくお願いします~。
好みの映画ではなかったけれど、上質な映画ですから日本でも観客動員数が伸びるといいですね。
ジュリエット・ピノシュに似ているというのも納得。
でも、オドレイは役柄が限定されそうですね。
オドレィは美人ではないけれど不思議な魅力があり、年齢とともにEmily WATSONのようなよい女優になれるタイプだと思います。
映画の中でマチルダが吹くチューバーの”解体新書”にはこういう見方があるのかと感心しました。私はチューバーの音は、船の汽笛に似ていて灯台、ここがマネクのかえる場所という意味をかねていると思っています。
それにしても25年とは!
今度、マダム・クニコさまのとっておきの映画を教えて下さい。
私は、郵便配達夫がけっこういい味を出していたと思いますよ。オドレイ・トトゥは雰囲気のある女優さんですよね。格別美人ではないけれど、印象に残ります。
今後の活躍も期待できますね。^^
マッチのシーンも最高ですね。
やっぱりにんじんさまも、このセリフはお気に入りですか。こどもっぽい言葉ですが、だからよりいっそうマネクの素朴さが感じられますよね。それに可愛い!
マッチをするシーンは、映画史に残るくらいキュートで素適☆
アイデアが見事です。