千の天使がバスケットボールする

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『ベッカムに恋して』

2011-07-19 22:19:58 | Movie
【なでしこ世界一!】

女子W杯 ▽決勝 日本2(PK3―1)2米国(7月17日・フランクフルト) FIFAランク4位のなでしこジャパンが、同1位で3度目の優勝を狙う米国をPK戦の末下し、女子W杯で初優勝した。日本は1―2の延長後半12分にセットプレーからMF沢が押し込んで同点に追い付いた。PK戦ではGK海堀が好セーブを連発し、日本が頂点に立った。沢は通算5得点で得点王に輝き、MVPを獲得した。 PK4人目に登場したのは、まだ20歳のDF熊谷だった。将来のなでしこを引っ張る背番号4は、ボールをセットすると落ち着いてゴール左上に蹴りこんで、日本の優勝をつかんだ。

「米国もパワーとスピードだけでなく、しっかりとした技術があり、欧州勢も素晴らしかった。
女子サッカー全体が創造的になってきている」―佐々木則夫監督談話より。


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決勝戦は、日本のスポーツ界の歴史をつくっただけでなく、世界のサッカー界の伝説までつくったと思う。あのなでしこたちの不屈の精神、最後まであきらめないたくまさしさと粘り強さ、そしてサッカーが大好きという気持ちがこぼれているようなあの笑顔!本当に感動をもらったよ。近年、日本でもサッカーにうちこむ小学生や中学生の女子選手が増えているそうだが、今回のW杯制覇は女子サッカーの裾野を更に広げて、未来のなでしこ予備軍の活躍も期待される。

今回、準優勝になった米国で女子サッカーが誕生したのは、40年前の教育修正法がきっかけだった。それ以来、米国が重んじる”男女平等”や”勤勉”の象徴として女子サッカーが位置づけられたこともあり、今や競技人口は300万人を超える勢いおいだ。教育熱心な中上流家庭の母親は試合会場への送迎に勤しみ、90年代以降は「サッカー・マム」と呼ばれて、社会現象にまでなった。

さて、英国に移住したインド人家族の次女、ジェスの場合は・・・。
インド系英国人のジェス(パーミンダ・ナーグラ)は、ベッカムがごひいきのサッカー大好き少女。兎に角、サッカーが大好きで両親には内緒で男子たちに混じってサッカーに興じる。そんなジェスのプレーを見ていて関心を寄せたのは、地元の女子サッカー・チームのエース・ストライカー、ジュールズ(キーラ・ナイトレイ)だった。ジュールズに誘われ、コーチのジョー(ジョナサン・リース・マイヤーズ)にも才能を認められ、益々サッカー熱がヒートアップするジェス。しかし、彼女の最大の敵は相手のゴールキーパーではなく伝統と保守を重んじるパパとママ、そしてインド系の社会だった。娘が脚を露出するはしたない格好で走り回る姿を見て仰天するママと、若い頃、英国の人種差別にはばまれクリケット選手をあきらめたパパの心配もジェスにはわかる。サッカーよりも料理の腕をあげ、弁護士になり、インド人と間違いなく婚約することを期待する両親と大好きなサッカーをする夢との間に、悩みまどうジェスだったが、とうとう誤解から彼女のせいで姉の婚約が破談になってしまったのだが。。。

米国で男女平等の象徴となるスポーツのサッカーが、インド社会では逆に女子がするにはふさわしくないスポーツとなる。インドの伝統を、男女差別意識や偏見ときるのは簡単だが、やはり、それぞれの文明や文化を尊重しなければいけない。英国で根をはって暮らしていても、彼らの生きる社会はやはりインドの社会なのだ。それにサッカーが盛んで労働者階級出身の若者がはいあがれるチャンスは、ミュ-ジシャンになるかサッカー選手になることだと言われるイギリスでも、女子サッカーは男子に比べて完全に低く軽視されている現状も本作から伝わってくる。様々なことに逡巡し、家族のために一旦は夢をあきらめかけたジェスが、自ら道を切り開いていく雄姿が、サッカーを知らない私でもつい身をのりだしてしまう。

ジュールズのママは、ひとり娘にはなんとか男子ウケするように胸を盛り上げ、ひらひら女の子らしいファッションをしてもらいたいと一生懸命な姿にユーモラスさをちりばめ、姉のド派手なインド式結婚式に重要な試合が重なりという祭りだワッショイ風エンターティメント性もあり、最後は一途なジェスを応援したくなる。そう、彼女にとって誰のものでもない自分の人生だから。

日本の女子サッカーの代表選手たちも遠征費用を用意できず、交通費節約のため国内合宿を関東と関西で別々に行ったこともあった。景気悪化で企業クラブの廃部が相次ぎ、2000年シドニー五輪のチャンスはなかった。そんな中でも選手たちは懸命にプレーを続け、情熱だけが強みで「今はだめでも未来の選手のために頑張ろう」と走り続けた努力が実った。なでしこリーグの観客も200人程度しか集まらないことも珍しくないし、サッカーに専念できる環境もそう多くはない。しかし、なでしこジャパンが世界の頂点にたてたのは、決して夢をあきらめなかったからだ。

原題:「Bend It Like Beckham」(ベッカムのようにカーブして)