千の天使がバスケットボールする

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「黒鳥 ブラック・スワン」山岸凉子著

2010-12-21 23:11:14 | Book
xtc4241さまのブログで映画『ブラック・スワン』公開情報を知ったのだが、主人公のバレエリーナを演じるナタリー・ポートマンがおそろしくはまり役だと感じる。クラシックのバレエリーナーとして身体能力は必須だが、容姿に求められるのは、努力で補うことは叶わない美貌とバランスのよい手足の長さは勿論だが、何よりも華奢で小柄な体型は重要である。それに、豊満な胸は10代の姫君を踊るにはむしろ邪魔である。迫力あるハリウッド女優は、やまのようにいるが、確かに知性的な品のあるコンパクトなカラダのナタリー・ポートマンは、生まれながらのバレエリーナの雰囲気がある。

さて、日本の漫画は世界でもひとつのカルチャーの分野として認知されつつあるが、私がナタリー・ポートマンさんにインスピレーションを与えてくれると思うのが、山岸凉子さんの「黒鳥-ブラック・スワン」である。1943年、ニューヨーク。マリア・トールチーフは黒い髪と大きな瞳に個性があるバレエリーナの卵。マリアは、ニジンスキーの妹にすすめられて、ロシアから亡命してきた天才振付師が手腕を発揮するニューヨーク・シティ・バレエ団に入団する。バランシンことミスターBとの初対面で、彼から贅肉を落とすように忠告されたマリアは、怒りながらも自分の丸みをおびた優雅な体型が時代遅れでもはややぼったいことを感じ始める。偉大な師から自分は気に入られていないと感じているマリアだったが、ミスターBの美しい女優の妻から自分が嫉妬をされていることを知らされて驚く。

やがて、その妻とも2回目の離婚をしたミスターBから自分に霊感を与える女性とほどなく求婚されて、21歳の彼女は正式な妻となった。才能あるミスターBの妻として、またバレエリーナとして幸福を味わうのもつかの間、彼の求める斬新な振付に、もはや自分の踊りのスタイルは旧式となっていることに気がつきはじめた。そして、ミスターBの視線が、マリアを通りすごし、17歳のやせて手足が長くモダンな振付も踊れるタニヤにあることを。
それでも妊娠を喜ぶマリアに、ミスターBは優れたバレエリーナは人類に美をもたらす存在と諭し、決して出産をのぞまない。マリアは少しずつ、気づきはじめる。彼が求めて追求する”美”の正体を。。。

「白鳥の湖」は、音楽、衣装、豪華さ、物語性とともにもっともバレエらしいバレエで、言わばバレエの王道である。王子のジークフリートは森の中の湖で白鳥の化身となった王女オデットの清楚な美しさに、心から永遠の愛を誓う。ところが、ジークフリートの成人の祝賀会にやってきたのは、オデットに瓜二つの悪魔の娘のオディール(黒鳥)だった。そうとは知らない王子はオディールにも愛を誓ってしまうのだった。オデットとオディールはひとり二役で踊られることが多いのだが、オデットの乙女チックな清楚さとは一転して、オディールは黒いチュチュを着て妖しくも誇り高く王子を誘うのである。所詮、悪魔の娘は悪魔の娘、”なりすまし”のかりそめの恋とは知りつつも。「白鳥の湖」と聞けば、誰もが脳裏にうかぶのはあの楚々とした優美な白い白鳥だろう。しかし、純粋で穢れを知らない白鳥と狡猾で官能的な黒鳥は、実は表裏一体であることを少女は本能的に知っているものである。

映画『ブラック・スワン』は来春公開だそうだが、これは是非とも観に行かなければ。

■「テレプシコーラ/舞姫」の第二部5巻が昨日発売されていた!
これから本屋に行かねば・・・。
「テレプシコーラ/舞姫」
「テレプシコーラ/舞姫 第二部3」