千の天使がバスケットボールする

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『デンジャラスな妻たち』

2010-05-18 23:22:57 | Movie
邦題は『デンジャラスな妻たち』って・・・、私のことではない。
主演は大女優のダイアン・キートン。結婚以来、専業主婦としてずーーっと安泰な椅子に座ってきたブリジット(ダイアン・キートン)。掃除の行き届いた瀟洒な邸宅に住み、趣味のよいインテリアに囲まれて良妻賢母として家族を支えてきた彼女は、苦労とは無縁な奥様。ところが大変!高給”鳥”の夫がリストラにあって一気に失速。邸宅も手離すはめになるかもしれない危機を迎えた。ところが、文学部出身で長く専業主婦だった彼女には、キャリアも就職に有利なスキルもなく、ようやく見つけたのが連邦準備銀行の掃除婦のお仕事。いつもは洗練された服装なのに、地味なつなぎの作業着に映画『オーケストラ』の元指揮者と同じように雑巾やバケツ、モップを積んだワゴンをひきながらの清掃活動。紳士トイレだって、お仕事とあれば侵入。ところが、彼女は偶然に古い札束を廃棄処分するシングル・マザーのニナ(クィーン・ラティファ)と出会ったことから、不要なお札をちょっとばかり、あくまでもほんの少し失敬することを思いつく。そして、いつも踊っている風変わりなジャッキー(ケイティ・ホームズ)も仲間にひきいれてなんと廃棄する札束を横領する計画を実行するのだったが。。。

本作は、実際にロンドンでおこった事件をテレビ映画化された作品をハリウッドでリメイクした映画である。女三人寄れば姦しいだけか、とんでもない。文殊の知恵どころか、男たちもかなわぬくらいの策士になり、またある時は大胆不敵な行動家になる。そしてお決まりの女の友情も花を添える。ダイアン・キートンは、あいかわらず均整のとれたスタイルがよく素敵な初老に近い中年の女性を演じている。私は『ミスターグッドバーを探して』という映画を初めて観たときに、ダイアン・キートン演じる女性教師の深い孤独に胸をうたれたのだが、彼女の本来のキャラクターはあかるさと聡明さにあると思う。その点で、掃除婦の仕事がおわって作業着を脱いで一歩職場を退社したら中産階級の妻にふさわしいセンスのよい服装に着替えたブリジット役、そしてふたりの共犯者や夫たちもまきこんでいきながらみんなを束ねる役柄がよく似合っていると思われる。
しかし、その大女優をこえるくらいの体重と存在感を示したのが、ニナ役のクィーン・ラティファだった。胸も豊かな堂々たる体格の包容力!彼女の犯行の動機が賢い息子たちの教育費のためとは泣かせる。黙って立っているだけでいい味だしている女優だった。余談だが、ドラッグ常習犯で危ない雰囲気のジャッキー役を演じたケイティ・ホームズはトム・クルーズの恋人だとか。キャスティングは日本未公開映画にしては豪華。

ところで、彼女達が勤務する連邦準備銀行を統括するFRBに関する過去記事を復習すると(米国の不思議な聖域「FRB」)、FRBは米財務省に小切手をきって財務省短期証券(TB)を購入し、それを”準備”してドル札を発行する業務だけでなく、ドル=マネーの信頼を維持していくためにも、通貨共通量のコントロールという役割を担っている。彼女たちが廃棄処分予定の札束を横領したのは1億円相当と思われる。本来なら市場に出回るべきでなかった1億円が増加しても、日本国内の通貨量(紙幣と硬貨)が70兆円であることから、マネーのバランスが崩れるほどのものではない。感覚として国を相手どりボロ布をリサイクルするくらいの罪の意識で被害者がいないという点で気楽に鑑賞できる娯楽映画が成立した。ちなみに、国内で日本銀行が新札と交換して廃棄処分にする札束は年間3000トンにものぼるそうだ。2007年に某地方銀行では、34歳の女性行員(準職員)がパンツの中に100万円を着服した事件が発生した。同日に残高があわなくて問題が表面化して、男性調査員が男性行員の身体検査を行なったが女性の身体検査はなかったそうだ。ご本人が自供して、横領したお金を全額返金して告訴は免れたそうだが、今後は検査の見直しをするとのことだがどこまでやるかっ身体検査・・・が気になる。
本作でも、外部委託している警備会社がけっこうキーポイントとなっている。仕事を終えて退社する時に男性警備員がお金をもtだしちないかひとりひとりチェックするのだが、実際、冬だったら100万円パンツどころか、女性の場合、全身で1000万円ぐらい”着服”できそうな感じがする。

監督:カーリー・クーリ