千の天使がバスケットボールする

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『宇宙へ。』

2009-09-09 22:58:45 | Movie
一昨日の夜、帰宅途中で最寄駅から坂をのぼっていくと、黄金色の月がひときわ大きく神々しく輝いていた。
あの遥かかなたにある月面に人類がおりたったのは、今から40年も前の7月20日のことだった。

「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である  That's one small step for a man, one giant leap for mankind」
初めて月面をふんだニール・アームストロング船長の名言は、単にいち国家である米国の重要なアポロ計画の成功以上に、人類全体の大きな飛躍、そして米国が果たした人類の進歩への貢献も決定づけた。本作は、宇宙をめざすNASAや選ばれた宇宙飛行士たちの検討ぶりを記録映像から編集して製作されたドキュメンタリー映画である。

1957年、旧ソ連が「スプートニク号」の打ち上げに成功して宇宙開発の競争がはじまった。翌年、ソ連と対立する米国でもNASAが設立され、マーキュリー計画がスタートして本格的な宇宙開発にのりだした。古い16ミリの映像が映し出すおもちゃのような頼りないロケット。打ち上げの瞬間からよろめきながら地上をよろよろと離れていくと、案の定みるまに失速して墜落していく。開発当初はこんなもんだったのか。しかし、61年にケネディ大統領が60年代には月への有人飛行を成功させると宣言するや、さすが米国らしい選択と集中の技は鮮やか、打ち上げる度にロケットの容姿も優れ、迫力と安定感も増していく。

なんでもかんでも「エコ」とブームになりつつあるご時世のおしゃれなエコとは正反対、ドーーーッンとど迫力のエンジンが噴射する姿から想像される大量のエネルギーと二酸化炭素の放出、それまでの膨大な時間と労力、莫大な経費や開発費用があっというまに消えていくさまは、むしろとてつもなくエコでない巨大な浪費をみているようで気持ちがすっきりする。それでも打ち上げに成功すれば、このさいエコなんかどうでもよいと豪語できるが、一瞬のうちに超高額なロケットが宇宙飛行士の貴い命ととも燃え尽きてしまう失敗は、宇宙開発分野の難しさと厳しさを克明に物語っている。初めての一歩から、宇宙ステーションでの若田さんの活躍まで、成功もあれば深い悲しみの失敗もある。87年のチャレンジャー号の爆発事故では、世界中の人々が見守る中で7名の宇宙飛行士の命が失われてしまった。

何故、人は宇宙をめざすのか。

国家としての宇宙開発の意義は、国家の威信、軍事開発、国威掲揚とさまざまな思惑と計算で成り立つ。しかし、人はそれだけでなく、宇宙への憧れ、見果てぬ宇宙への浪漫にかきたてられて挑戦していく。危険が伴うミッションに次々と笑顔でロケットに乗り込むたくましくセクシーな宇宙飛行士たちを見ていると、本来の米国の開拓民からなるフロンティア・スプリットを思い出す。テンガロンハットをかぶって馬に乗ってた時代から、開拓精神の逞しいのが米国民の魅力。人類の宇宙開発全体像を描いたというよりも、米国によるNASAの記録映画である。それにしても宇宙から帰還した宇宙飛行士を迎えるパレードでの熱狂ぶりはすごい。確かに偉業だし、ヒーローは宇宙飛行士なのだが、彼らを支えてきたそれまでの宇宙飛行士や技術者たちの存在を考えると、あれほどの熱狂は日本人にはちょっと考えにくい。第一回めのチャイコフスキー国際コンクールで優勝したヴァン・クライバーンの時のパレードもとんでもなくすごかったようだが。

昨日、海上自衛隊の医師、金井宣茂さん(32)が日本人で11人目となる宇宙飛行士の候補に選ばれた。4月に元パイロットの大西卓哉さんと油井亀美也さんが候補生に選ばれた時は惜しくも補欠だったのだが、わずかな可能性にかけて金井さんは落選してもずっとひとりで独自に体力の訓練と英語学習に励んできたそうだ。ロケットに乗り込む時の宇宙飛行士たちの晴れやかな笑顔。それが、すべてを表現しているように私には思えた。

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