千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

『プラダを着た悪魔』

2006-12-01 23:51:26 | Movie
”That!s all.”

それがプラダの服を着た悪魔の上司の口癖。眼鏡越しにつきつけられるその言葉を聞いた瞬間に、この鬼上司、つまりハイ・ファッション誌”RUNWAY"のカリスマ編集長ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)のありとあらゆる命令と要望と注文に応えるために、新米第二アシスタントのアンディ(アン・ハサウェイ)は走らなければならない。それは、まさに特攻隊並みの命懸けの至上命令である。
アンディは、ジャーナリスト志望。田舎の大学を卒業してNYにやってきて、ドルチェ&ガッバーナの名前すら知らずにファッションに興味はなかったが、夢を叶える足がかりになると考え、”RUNWAY”の名物編集長の第二アシスタントになった。ところが、その職場はとんでもないクラッカー族が跋扈するステージだった。

靴は、足首が折れそうな高~~いピンヒールが鉄則。
食事はダイエット食で2~4号サイズのモデル体型を維持。6号の服なんぞ問題外。
常に流行の先端であり自分に似合った洗練されたモードな衣装が戦闘服。
そして、そして、悪魔のような編集長のミランダに絶対服従。彼女の命令はどんなことにも服従して要求はかなえなければならない。ご機嫌を損ねた瞬間に、自分の席はなくなる。
だから1年という期限をつけて、アンディはファッションを変え、彼女の双子の娘たちのためにまだ店頭に並んでいない「ハリー・ポッター」の新作も調達し、毎朝のスターバックスの熱々のコーヒーと食事も用意。24時間携帯電話でミランダの連絡にこたえてきた。やがてアンディは、ミランダにデキル部下と認められたいがために、洗練されたクラッカー族の仲間いり。たちまちにその有能ぶりも周囲に認められていき、第一アシスタントに昇格。しかし仕事に反比例するかのように、私生活が失速していく。恋人の誕生日も一緒に祝うことができない。そんな中、急転人事の情報を入手するのだが・・・。

新人の有望な女の子のいかにも米国らしいサクセス・ストーリーだが、なんといってもメリル・ストリープ演じるミランダとアン・ハサウェイのアンディのかけあいが抜群のおもしろい。幕開けはピン・ヒールの靴が次々と表れ、戦場に出勤する女性たちの朝の慌しいNYの街の風景からはじまる。最後に登場するのは、勿論鬼編集長。エレベーターのチーンという音とともにスクリーンに登場するメリル・ストリープのあまりにも”らしさ”にあっけにとられて笑ってしまう。メリルの整っているが線の細い冷たい顔立ちやシルバーの常に決まった髪型と、アンの大きな目と唇の愛らしい顔立ちと黒くて長いゆれる髪、実に対照的で正反対のタイプが主従関係を表現している。
鬼編集長のミランダの行動をコメディにしているのだが、彼女の欲求は当然とも思える部分も多い。責任のある超多忙の役員クラスの男性だったら、15分刻みで行動するために、移動用の車が指定の場所で待っているのは当然。食事もしかり。仕事のために至らない私生活の買物を秘書にまかせるのも、日本の重役だったら珍しくないだろう。アンディ以上に、上司はもっと仕事に費やす時間は多いのだから。「女は感情的になりやすい」という世間一般が考える女性たちを主人公に設定したから、楽しめる傑作コメディとして成功したのだろう。そんなことも考えた。

ついでに次々と登場する素適なファッションにも、女性の観客だったら大満足できる。毎日出勤すると高価なコートと大きめのバッグをアシスタントの机の上に投げつける場面がわくわくする。そしてなんといっても圧巻は、パリでのファッション・ショー。
”リアル・クローズ”という実は没個性で貧しいコンセプトで、econ-economeさまお気に入りの元気のよい押切もえさんたちが登場する東京ガールズ・コレクションとは全く異なる、芸術の輝きがまぶしい”RUNWAY”。そこはまさに神が宿るかのようなファッションの聖地である。また莫大なお金が生まれて、そして消えていく出発点でもある。それを司るのが、プラダを着た悪魔。
アンディが最後に背中を向けたのは、愛すべき悪魔ではなく、仁義なき戦いのファッションという戦場と資本主義のからくりだったのだろうか。

「以上」
仕事でメールする機会が多いのだが、「日経アソシエ」の文章の書き方特集を読んで、必要簡潔にするあまり自分の文章は冷たい印象を与えているのではないかと考えていた。私も実は、最後にいつも「以上、~」で依頼や報告をしめてきた。メリンダは、最高にクールだと思うのだけれどもね。

やっぱりいつかはNYでスタバを飲みたい気分★