千の天使がバスケットボールする

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ドルの威光にも陰り

2006-08-07 23:35:17 | Nonsense
小説「ウルトラ・ダラー」で渋い名脇役だったアジア大洋州局長の瀧澤が残した言葉のとおり、ドルに支配される世の中はやはり不健全だろう。
そんな不満を打開しようと、3月8日の石油輸出機構(OPEC)通常会議の席で、日量400万バレルの原油生産に達するイランは、中東産原油価格をユーロ建てにすることを大胆にも提案した。しかし、中東の産油国の多くは、米国の庇護のもとに国家の安全保障をかろうじて維持しているだけに、この提案を受け入れるのは難しい。

石油の世界は、1859年米国ペンシルベニア州で商業油田が生産をはじめて以後、米国を中心に回ってきた。原油価格はすべて米ドル建てであることによって為替リスクもなくエクソンモービルの昨年の純利益は361億ドルに達した。現在の原油価格は、ニューヨークの原油先物市場(NYMEX)に上場されたWTI原油先物価格が事実上決定している。日本でもガソリン価格が高騰している。ご近所のガソリンスタンドでは、ハイオクが1㍑150円に値上していた。しかし、原油が不足しているわけではないのは誰もが知っているだろう。WTIの生産量が日量30万バレルに比して、NYMEXでの一日の先物取引はその700倍の取引の2億バレルになる。この先物市場で決められた価格が、世界中の原油取引の基礎になることを考えたら、米国のヘッジファンドや年金基金といった投機筋に、石油価格が支配されていることがわかる。
彼らは、為替リスクを負わずに、原油を投資の対象として巨額の利益を得ている。

イランのユーロ建て取引の提案に関し、大賛成したのがロシアと反米を示す国にすりより石油資源の確保をめざす中国、欧州の石油企業だった。ユーロ高のため、原油収入をドルで受け取りユーロに転換する時に為替損が発生するロイヤル・ダッチュシェルにとってもユーロ建てが望ましい。ただユーロ建ての取引を推進するためには、NYMEXのような先物市場の創設などの様々な整備が必要であるが、いまだ動く気配はない。

ライス国務長官は、2月のイランの核開発協議において、原油価格のドル建て維持を働きかけたという。安全保障と引き換えに。
日本でも、ホテル業を廃止する予定のプラザホテルで行われた85年のプラザ合意により、1ドル240円が一挙に円高に進み、円建てにより調達した石油企業の開発資金の借金がなかなか減らず、05年には1兆円を超える不良債権問題で石油公団が廃止された。
今後、石油覇権に向けてドルとユーロの戦いが始まる。