千の天使がバスケットボールする

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「ウィーン弦楽四重奏団」The Vienna String Quartet

2006-05-26 23:00:32 | Classic
演奏家にとっては、室内楽は大変難しいが演奏が楽しいジャンルだという話はよく聞く。しかし室内楽のチケットは、なかなか売れない。
けれどもウィーン弦楽四重奏団のチケットは、ほぼ1時間で完売。1964年創設されたという伝統の重みなのだろうか、メンバーのいずれもウィーン・フィルハーモニーのトップ奏者で構成されてきたという実績によるものなのだろうか。予想していたように、観客の年齢層は高い。ヴァイオリンを習っているというお子様の姿はない。それが室内楽というものだ。音楽の最終的に到達するスタイルがオペラとしたら、私は逆に室内楽に向かうだろう。熱心に耳を傾ける聴衆のための音楽は、まるで熟成したワインのような香りを放つも、現代人むけのきりっとした新鮮な切り口も忘れない。ウィーンの伝統ある柔和な響きに、繊細だがしなやかなつよさを秘めた音、というのが特に「狩」で感じられた印象だ。

さて、なんといっても今年はモーツァルト生誕250周年だからオール・モーツァルト・プログラム。なかでも人気の高いハイドン・セット。
モーツァルトは、1781年に作曲されたハイドンの「ロシア四重奏曲」に感動し、彼の6人の息子にたとえて1782年から85年にかけて6曲の弦楽四重奏曲を作曲して献呈した。形式的にはハイドン風の上品な装いで整えながらも、随所に天才らしい創意と妙技がひかる傑作ばかりである。またハ長調という調をとりながら「不協和音」というニック・ネームを与えられている最後の第19番の序奏は、当時としては非常に斬新な和声進行をこころみている。まさに天才の名にふさわしい業績である。同時代のサリエリが、既成の形式にそった中身のない音楽をただきらびやかに繰り返してつくった作品とは違うのだ。

モーツァルトの高い完成度と無垢な音楽性を表現するのは、実は難しい。まるで神から決められたような黄金の旋律を、あくまでも自然な音として演奏されることが望まれる。しかもこんな個人的な理屈とこだわりの美学を意識させてくれないように。
ただひたすら、モーツァルトの音楽をたっぷりと味わった2時間弱、近頃お疲れ気味の我が身を心身ともにいたわってくれたかのような演奏会。「ウィーン弦楽四重奏団」にやっぱり感謝。
アンコール曲も、格別な味わいがあった。

------ 2006年5月25日 王子ホール -----------------------------------------

第1ヴァイオリン:ウェルナー・ヒンク
第2ヴァイオリン:フーベルト・クロイザマー
ヴィオラ:ハンス・ペーター・オクセンホファー
チェロ:フリッツ・ドレシャル

<オール・モーツァルト・プログラム>
弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調 K.421
弦楽四重奏曲 第17番 「狩」 変ロ長調 K.458 
弦楽四重奏曲 第19番 「不協和音」 ハ長調 K.465 

■アンコール
弦楽四重奏曲 第21番 「プロシャ王第1番」ニ長調 K.575 第二楽章から