千の天使がバスケットボールする

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「科学の最前線で研究者は何を見ているのか」

2005-01-21 23:44:54 | Book
新たな時空の旅へ

ナビゲーターである瀬名秀明さんのこのようなタイトルの前書きから始まるこの著書は、読者が日本人の(←ここがポイント)18人の研究者達が何を考え、何のために、何を研究して何処へ行こうとしているのか、一緒に時空への旅をする物語(←ここもポイント)である。

まず最初のポイント===日本人であること。科学の世界は世界共通でもあり、西洋的な価値観の中から科学の方法論ができているが、日本人の価値観が独創的な研究が生まれることもある。また日本で研究している意味を考えている研究者が実に多い。
この点に関しては、「環境がつくった文明と科学」で安田喜憲さんが科学革命が何故西洋でおこったのかという話がおもしろい。ヨーロッパは麦作農業で稲作よりもはるかに手入れが簡単なので、あまった時間を利用して地主達が都市に集まり、市民社会が成熟して科学革命が芽生えたという説である。

物語===次に安田さんは学会発表や論文などで「物語」と言われるのは評価が低いことだが、物語は必要であると力説している。A~Bの事象を結びつけるためには物語が必要なのに、それを拒否したから日本の科学は面白くなくなった。
科学には客観的な事実と正確なデーターの膨大な積み重ねのうえに華開くものであろう。しかし事実と事実をつなげるには独創的な物語をつくる能力も大事なのではないか。門外漢の発言ではあるが。

最後に真理ははたして存在するのか。
「宇宙に残された96%の謎」で佐藤勝彦さんが、科学博物館設立準備の会議のとき、「宇宙の謎を解き明かす真理を探求している」という話をしたら、生物学者から「真理なんてものは存在しない。我々はあくまでも自然のメカニズムや機構を調べている」と反論されたらしい。
真理というのははたして存在するのか否か。
これはもはや解答のできない永遠のテーマーであろう。
物理学者のロマンと生物学者の形而下的な考え、これも科学なのである。

米国は普通の主婦がスーパーで科学雑誌を購入する国でもある。
科学の最先端と一般の人の橋渡しをする結果となった良質な本なので、売れるといいなと願っている。
そうそう、瀬名さんの増加した体重に、お仕事の充実ぶりを連想するのも科学的な物語、としておこう。