父は、地質学者だった。
子供の頃から山歩きが趣味だった、というのは父の葬儀の日に
父の従姉妹だという初対面の老婦人から聞いた話しだ。
転勤が決まり、パラダイスに一歩足を踏み入れた父は、どう思ったのだろう?
四方を山で囲まれたシチュエーションはきっと父の「血」を騒がせたに違いない。
この山を全部掌握してみせる・・・そう願ったに違いない。
しかし、父の願いは叶えられることはなかったと思う。
何故って、 . . . 本文を読む
二月(如月)
「あ・・・・」
「なに?」
「いや、これ・・・これ、何ていう梅?」
「あぁ、これ?青軸系の月影だよ。キレイだろ?」
ゆっくり近づいて来たこの友人は神職についている。
代々神主という家の長男に生まれ、ただ何となく家業を継いだ男。
それが二十年以上の時を経て、今では「生まれながらの神主」の体なのだから不思議である。
この男はちょっと見、どんなことにも動じず、穏やかで、ある種「達観」し . . . 本文を読む
さすがに仕事中は違うが、一日に何回もこういう「思い出したくも無い」昔の思い出が
まざまざと蘇ってくるのは何故か?と言えば原因は「あれ」の存在だろう。
まだ手付かずのまま置いてあるが、あの日「中身が何か大体想像がつく」と言った
山崎の言葉が、俺の頭の中で反芻している。
俺にだってあの形状からして、中身が本か或いはノートの類 . . . 本文を読む
小学校入学当時、俺はチビだった。
入学式の思い出は、最悪なものだ。
何故って、さぁ、これから入場! という時に緊張のあまり吐いてしまったから。
「しまった!」と瞬時に思いはしたものの、どうしようもない。
先生よりも先に「大丈夫?」と寄ってきたのがまさやだった。
女の子みたいな綺麗な顔が、心配そうに俺を覗きこんでいた。
「うん・・・」と答えたが、恥ずかしさで顔も上げられなかった。
先生が直ぐに駆け . . . 本文を読む
部屋の隅に無造作に置かれた「あれ」を眺めながら
俺はほぼ毎日「どうしたものか・・」と考えている。
無駄な物は一切置かない主義の俺の部屋にそぐわない「あれ」。
風呂敷に包まれた「あれ」が俺の手元に来たのは、咽返るほど暑い夏の或る日の事だった。
その日俺は、急逝した幼馴染の天敵「まさや」の葬式に行った。
葬式はまさやの自宅で行われた。
久しぶりに行ったまさやの家は何も変わっちゃいなかった。
「懐かし . . . 本文を読む
今日は、一生の不覚・・。
今日の3時間目は音楽だった。
僕は音楽の時間に真面目に授業を受けた例が無い。
何時も俯いて「単語帳」を捲っていても、文句を言う先生がいなかったからだ。
なのに、今日は珍しく先生が話しかけてきた。
音楽の先生はどちらかと言うとクラシックよりポップス調の音源が好きらしくて、
そんな曲ばっかり生徒に歌わせる人だ。
保健室の先生と仲良しで、2人共美人で大柄だから目立つ存在だ。
僕 . . . 本文を読む
僕の趣味は「勉強」。
渾名は「ガリ勉君」。
勉強以外に好きな事は無い。
学校で起こる騒がしい出来事にも、まるで興味が無い。
昨日も廊下で女番長が、うちのクラスの女みたいな男子を殴って
騒ぎになっていたけど「あっ、そう。」っていう感じ。勝手にやっててくれ。
今の僕の目標はソウル大に入って、主席卒業する事だ。
あぁ、女の子ってうるさい!次は体育なんだから、とっとと着替えに行けよ・・。
「ねぇ!」
「エ . . . 本文を読む
校庭を横切って校門まで行く間中、俺達は注目の的だった。
「あれって、どういう組み合わせ?」
おい・おい、聞こえてんぞ~?どういう組み合わせでも良いだろ~?
「オ~イ!」
ダチが何人も走って来た。
「番長さん、今日はコイツと帰るんですかぁ?」からかう様にダチが聞いた。
「・・、うん。」
「!!うん?うん、だって・・」
あいつ等、あんまりにも素直な彼女の反応に、呆然と立ち尽くしてやがる。
「じゃぁな! . . . 本文を読む
俺は、毎日・毎日諦めずに彼女を迎えに行った。
「ピンポーン」
「毎朝、ご苦労様です。あの~、お嬢様はもう行ってしまわれたんですよ?」
「エッ?もう行っちゃったんですか?」
「・・、ハイ。」
嘘だな。まだいるんだろう?
一回で良いから、顔見せてくれないかな~?今日も空振りの俺・・。
家を出る時に大姉ちゃんに「あんた、最近随分と早く行くじゃない?
何かあるの?」と聞かれた。
「な・何も無いよ。」
「何 . . . 本文を読む
俺は遊びたい盛りの17歳。俺の通う高校は共学で、可愛い女の子もいる。
だけど、おれにはまだ彼女がいない・・。何故かって?男が好きだからさ!
冗談、冗談だよ!原因は内の女共にある。
俺は一種の「トラウマ」を抱えている。
母さんは早くに死んじまった父さん変わりに一家を切り盛りしてきた「豪傑」だ。
武道という武道は何でもこなす「道場主」だ。
加えて俺には三人も姉ちゃんがいる・・。
これが又、三人共「師範 . . . 本文を読む
【5】
ヘウォン、ありがとう・・私本当に感謝してる・・。
ヘウォンはテソンの事、好きなんだね?私やっと分った!
始めは何て仲の悪い二人なんだろうって思ったけど、違うね?
テソンは気が付いていないかもしれないけど、ヘウォンはず~っと
テソンの事気になってたんだね・・。
さっきも凄い優しい目でテソンの事眺めてた。まるでお兄さんみたいにね・・。
そっか、テソンが長生きして、ヘウォンと私が結婚したら(キャ . . . 本文を読む
どうしよう・・。テソンが遠くに行っちゃう。
この間「姉さんを愛してる」と言われた時、困っちゃったのに、
今日ヘウォンに「あいつ、いなくなるよ」と聞かされて、
こんなに胸が締め付けられるなんて、いったい私、どうしちゃったの?
ヘウォンは「ほら、見ろ!」って言ってたけど??
テソンに弟としての愛情しか無いかと聞かれたら、
もう首を縦に振る事は出来ないかもしれない。
自分にも良く解らない感情・・。
あの . . . 本文を読む
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