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東武佐野線沿線CITY-GUIDE 〔カテゴリーからお入り下さい〕

こならの森135号

2008-05-10 | 101号~200号
       ■こならの森135号■1999.7発行

表紙 「小中町」

C・o・n・t・e・n・t・s

■こならの森8月号■

3pとしこの巻頭詩「べにばな」
4p-7p とちぎとぐんま
8pヤンバルお店紹介『 イタリアンパスタマンジャーレ』
9p 高橋さん夫妻 誕生しました
10-11p インタビュー/ライオンズ
12-13p NAZA「2」
14-18p JC・ルネッサンス
19p 現代国語 たん
20-21p 協賛店・MAP
22p 辛口映画評「菊次郎の夏」
23p 書評・絵本紹介
24-25p クイズ/タウン情報
26-29p インフォメーション98
30p こならの森から
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【本文抜粋記事】

SFミステリー

NAZA報告 第2回 松本鬼三郎

 NAZA、その秘密基地は、亜空間にある。そしてその境界は、電磁波発生装置によって閉ざされている。ごくまれに、難破船や道を外れた登山家などが迷い込んだりすることがあるが、境界線にある管理局によってすみやかに排除される。
 今も境界線管理局のモニターに、赤く点滅する点が浮かび上がった。
 局員のアマリは、すぐに通信回線をひらいた。
 「管理局のアマリです。モニターが侵入者をとらえました。侵入者は一名。ただ、もうひとり、こちら側から外に向かっている者がいます。何物かは不明」
 「確認してくれ。俺は現場に向かう」
 「無茶はしないでくださいよ」
 「事の臨んで、臨機応変に判断し、最善の行動をとる。まかせておけって」
 「了解」
 そのころアキラは、強い想念にとらわれていた。何者かが、彼の意識に働きかけている。何かを語りかけようとしている。それは一種のテレパシーだろう。彼をその相手を確かめるために、施設を抜け出し、境界線へと向かう荒れ地を歩いていた。
 一時間も歩いただろうか。遠くに人影が見える。目指す相手に違いない。しかし、その姿はすぐに見えなくなった。荒れ地に霧が出てきた。霧はみるみる深くなった。アキラは、濃密な霧に包み込まれた。延ばした手が、まったく見えない。足場の悪い荒れ地で、これでは進むことができない。
 そのとき、霧の向こうから、不思議な声が聞こえてきた。霧の中から聞こえてくる声は、魔性のつぶやきのような響をもっていた。
 「こちらは管理局のアマリ。キリカと連絡をとった。侵入者は、テロリストに雇われた傭兵。登山者を装っているが、武装している。仔細は不明。すみやかに排除されたし。それからもうひとりは、アキラという訓練生。意識を操作されている模様。目を覚ましてやってください。以上。」
 「了解」
 声がとぎれた。
 アキラは自分の名前をよばれて、びっくりして辺りを見まわした。
 すぐ近くで、何かが動いている。大型のワゴン車のようだ。黒い影が動いている。静に、ゆっくりと、彼の方に向かってくる。一メートルほどに近づくと、霧が乱れて、黒い影がはっきりと見えてきた。それはワゴン車などではなかった。巨大な物体、しかも生物の東部だ。黒い鱗に覆われた皮膚、鼻面から伸びた長いひげは五メートルもあろうか。丸く濁った水晶のような目玉が、ぎょろりとこちらを向いた。頭頂部には、後方に伸びる二本の角と、たてがみのような金毛がなびいている。
 アキラは、ただ立ち尽くしていた。声が出ない。身体がすくんでいる。息さえできない。ただ目をあけて、なめらかに動く生き物の姿をみつめていた。
 「どうやら、目は覚めたようだな。」
 すぐ近くで、声がした。
 振りかえると、すぐ後ろに年配の男が立っていた。グレースーツに身をつつみ、手には飾り彫りのある大きなつえを握っている。
 「あなたは?」
 「竜のスデッキマスター。といっても、訓練生ではまだわからぬか。境界線の警備員といったところだ」
 「境界線の?」
 「そう。テロリストに雇われたスパイが入り込んだので、始末しにきた。お前は、そのスパイに操られていたんだ。おそらく精神波の共鳴音をたぐりよせてきたのだろう。精神感応は、注意しないと、つけいられる危険がある。覚えておくんだな」
 「はあ。ところで、いまの巨大な生物はなんですか?」
 「竜だよ。俺は竜使いでな。この杖は生体エネルギー増幅装置だ。これで竜を顕在化させ、思い通りに操ることができる」
 年配の男は、そう言って杖を高々と振り上げた。
 竜は頭をぐいっと持ち上げると、そのままするすると上空に上っていった。男が、杖を振り下ろす。竜の長く黒い影が、地面に向かって降下をはじめた。
 さきほど人影をみた場所だ。
 ピストルの発射音が、広野に響き渡る。それから男の悲鳴が、上空へと上がっていった。一陣の風が起こった。霧の切れ間から、天に昇っていく竜の姿が見えた。


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