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『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』(R15+) すべては幻想なのか?!

2012年08月24日 | ???だった映画

原題:CRAZY HORSE(R15+)
2011年・フランス/アメリカ(134分)
               
監督:フレデリック・ワイズマン

出演:フィリップ・ドゥクフレ、
   クレイジーホースダンサーたち  ほか


鑑賞日:2012年7月30日 (渋谷)

ワイズマン監督は、
クレイジーホースが纏っている幻想を剥ぎ取り、
丸裸にした?!

<内容>
仏パリ、ジョルジュ・サンク大通りにある有名なキャバレー
『クレイジーホース・パリ』。

1951年の創業以来、
芸術的なヌード・ショーで多くの人々を魅了し続けてきたそのステージに、
さまざまなドキュメンタリー作品を手掛けてきたフレデリック・ワイズマン監督が
密着。

世界的な評価も高い演出家フィリップ・ドゥクフレが制作した新しいショー
「DESIRS」の舞台裏と完成までを追った映画。


もともとはワインセラーだったクレイジーホースのホール
そこで夜ごと繰り広げられるショーは、刺激に満ちている。
きらびやかな光とカラフルな照明。
女性の身体だけがもつ美しく柔らかな曲線を生かし、
エロティックでアーティスティックなシルエットをスクリーンに映し出し、
その裸身をステージ上で披露する。

時に官能的、時にコミカル、
見事なプロポーションのヌードダンサーたちによる魅惑的なステージは、
目がくらむほど・・・。

と、クレイジーホースのステージはいかようにも称賛できる。

だが、
本作は、
ショーの素晴らしさを紹介することが目的ではない。
クレイジーホースのシステムと、
そこにある幻想に対する疑念こそが、監督の興味の対象。


日中のジョルジュ・サンク大通りは、とてものどかで静けささえ感じる。
クレイジーホース・パリの入り口も、
ここがそうだとは思えないほど、
昼間は目立たず、小さい。

だが、地下へと続く階段を下りると、
そこでは夜のステージに向けた準備が、毎日行われている。


ステージの主役は、もちろんヌードダンサーたち
彼女たちの日々の努力は大変なものだろう。
ダンスレッスンや体型の維持はもちろん、
ヌードを披露する以上肌の手入れも怠れない。
文字通り“包み隠さず”とらえられた楽屋での様子は、
ダンサーたちの素が垣間見え、興味深い。

振り付け師・演出家として高い評価のあるフィリップ・ドゥクフレ
新作「DISIRS」に高い意識をもって取り組んでいることが、
ワイズマン監督のカメラを通しても伝わってくる。
だが、彼の才能を生かすには、
クレイジーホースという箱は狭すぎたのではなかったか?
制約により、
思い通りのステージに仕上げられないジレンマも伝わってきた。

クレイジーホース・グループの総支配人、アンドレ・ダイセンバーグ
シルク・ド・ソレイユの広報部長・営業宣伝部長だった経験をもってしても、
このキャバレーの運営の難しさが垣間見える。
だが、彼女だからこそ、全体をマネージメントできている気もした。

スタイリストであり衣装デザイン担当のフィフィ・シャシュニル
女性の身体の美しさを生かす衣装へのこだわりは、
ランジェリー・コレクションも作り出している彼女ならではだろう。
だが、衣装デザインより目を惹いたのは、彼女自身のキャラ。
明らかにご高齢なのだが、その声、そのもの言いが、
まるで少女のようだった。
その年齢不詳ぶりに、目が釘付けになった。

そのほか、裏方のプロフェッショナルな仕事ぶりを、
カメラは物静かに、とらえ続ける。

だが、クレイジーホース・パリの一つの問題点が端的に表れたのが、
芸術監督のアリ・マフダビだった。
ワイズマン監督は、最後に彼にスポットを当てる。

彼が熱く語るクレイジーホースへの思い入れは、
もはや製作スタッフとしてではなく、マニアのそれとなっている。
並々ならぬ情熱は伝わってくるが、
芸術監督としての客観性を失った彼の限界は、
新作用にダンサーたちの唄をレコーディングするシーンで露呈する。
ヌード・ダンサーとしては一流でも、
ボイス・レッスンなど受けたことがないと分かるほど発声が未熟な彼女たちに、
唄を歌わせること自体が無謀。
どう聞いても素人レベルにもかかわらず、
彼女たちが歌っていることだけでマフダビは満足する。

結果として、この作品を観たほとんどの人が、
ラストで違和感を覚えたのではないだろうか。
新作「DISIRS」のステージは、
最後の最後にダンサーたちの歌によって、
チープな印象で締めくくられる。


“美しい女性たちの裸体を見せることによって大金を稼ぎたいと考える
 オーナーたちや、株主たちの幻想
 そのショーを観るために押し寄せる観客たちの幻想
 ダンスを踊り、
 役に扮してほとんど裸で演技することを承諾するダンサーたちの幻想。”
幻想を幾重にも纏ったクレイジーホース・パリの実態を、
余すことなくカメラでとらえたワイズマン監督。

それでも、幻想を求める大人たちは、今宵もクレイジーホース・パリに、
足を運ぶことだろう。


おっぱいが見られる度:★★★★★★★★★★★★
美しいお尻が見られる度:★★★★★★★★★★★★★★★★
芸術性と興行のはざま度:★★★★★★★★★★★★
裏方キャラの濃度:★★★★★★★★★★
ワイズマン監督の視点度:★★★★★★★★★★★★★★★★

鑑賞後の総合評価:★★★★


 

本作は影絵で始まり、影絵で終わる。
ひとりの男性の両手が、光と影によって、いろいろな動物に見え、
情景が見えてくる。

このシンプルな幻想に、ぼくは一番感動した。

余談:

クレイジーホースで供されているシャンパン『キュヴェ・クレイジー』。
シャンパーニュ地方のシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエの3種をブレンド。
曰く、“その味わいと喜びは、高級ストッキングのように無限に広がる”とか。
よく分からない喩えだけれど、一度はクレイジーホースで味わってみたい!?

 



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