編集長ブログ

月刊『農業経営者』編集長 昆吉則

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「提言型政策仕分け」に民間評価員として参加しました

2011年11月26日 10時25分40秒 | セミナー・シンポジウム
 「提言型政策仕分け」が11月20日(日)から23日(水)まで池袋のサンシャ
インシティ文化会館で開催されました。その農業部門(20日)で民間評価員と
して意見を申しあげてきました。これまでの「農業経営者」という雑誌や私ど
もの主張してきたことに対する世間的評価を考えてみれば、この私が農業に関
する5人の民間評価員の一人に選ばれるということ自体が驚きでした。要請を
受けたものの、これまでの事業仕分けの様子を見るにつけ仕分けに参加するこ
とを躊躇しましたが、「そもそも論」から話し合うとのことと同時に当該の
テーマに関してこんな見方もあるのだということを国民に知っていただくとい
うのが今回の目的であるとの説明を受け、お役目を引き受けることにしました。
 当日(20日)の農業部門の仕分けの様子は以下のサイトでご覧いただけます。
少し長いですが、一人でも多くの方々にご覧いただければ幸いです。
http://scple.bitmedia.ne.jp/shiwake/index.php?p=b
ページ上の日付 11月20日、B会場のタブを選ぶと、右側にセッションタイト
ルが出ます。それぞれをクリックすれば、動画がご覧いただけます。

 当日、私が発言した内容は概ね以下のようなことです。

1)現在の農業法規及び政策は、日本人の過半が農民であり、しかも国民が飢え
の中にいた時代に行われた農地改革の思想に縛られている。新しい思想による
農業法規、農政が必要である。

2)農地改革とは、別の側面から見れば地主という農業・農村の経営者を追放し、
農林省が農業の経営者になり、自作農化した農民とは、実は自ら借金する農水
省の小作人になったに過ぎない。当時の食管法は自分で作ったものを自分でお
客に売ることを法律で禁じていたわけだから、農家は長いこと“お客様”から
隔離されてきたのである。顧客に出会うことなく誰が経営者になれるだろうか。
食管法だけでなく現在の様々な政策による制約や過剰な保護によって農家は経
営者として成長することを阻害されている。そろそろ、農業の経営主体が農業
経営者自身であり、農水省はその顧問や相談役という立場に変わるべきだ。

3)その意味で平成14年のコメ改革大綱は画期的であった。それはコメの生産調
整を生産者または生産者団体が自ら判断して行うというもので、生産調整への
国の関与を無くしていくというものだった。しかしそれはその後の政変で崩れ
てしまった。もし、平成22年度を目処にしていたコメ改革大綱が進んでいれば、
日本のコメ農業はかなり変わっていたのではないか。大事なのは農水省が何を
するかではなく、何から手を引くかである。その意味では、農水省を批判する
だけでなく、政治家や団体組織や国民一人ひとりが自らを問うべきである。

4)オランダは普及員制度を廃止している。その結果、トマトなどの収量レベル
は10アールあたり70トンというレベルにも達し、IPM(総合作物管理)での
化学農薬を使わない比率は95%というレベルに達する農場もある。普及員を廃
止したことで民間のコンサルタントが活躍でき、さらに民間事業者であればこ
そ経営に対する有効性が問われる。その結果、農場の技術力が向上したという。
それに対して日本の普及員の技術知識は農業経営者の要求に十分に答えている
と言えるだろうか。

5)「強い農業」という言葉が盛んに使われているが、大事なのはマーケットあ
るいは顧客の支持を受ける農業を作ることが肝心なのである。私が「農業経営
者」と呼んでいるのは、農業界で語られる単に耕作規模が大きいということで
はなく、マーケットや歴史の変化に気付いており、風土を含む自らの経営資源
を顧客のために活かす能力を持つ農業者のことであり、そういう人々が増える
ことが大事だ。ただ単に平均耕作規模を大きくすれば日本農業が強くなるわけ
ではない。問題は経営力。

6)そもそも、なぜ日本の農業は弱いあるいは競争力が無いと決めてかかるのだ。
むしろそうした敗北主義あるいは自虐史観が当然のように語り続けられるのは、
農業界が「日本農業は弱い」という先入観を国民に与え続け、それを理由にし
た保護を正当化してきたからである。それはむしろ敗北主義の利権化というべ
きものであり、そうした敗北主義が日本の農業の成長発展を阻害している。

7)日本のコメが競争力が無いと言うが、現在でも十分な競争力は持ち得ている。
そもそも、93年のコメ不足の折に緊急輸入されて消費者に売れなかったインデ
ィカ米と日本のコメを単純価格比較して、日本のコメが4倍、5倍の価格差が
あるということ自体馬鹿げている。低コスト化を目指すのは当たり前であるが、
単なる価格の高低より日本の消費者の評価において競争力を語るのでなければ
意味が無い。さらに、価格の面でも、例えば三井化学が育種したミツヒカリと
いうハイブリッド米は1トン近くの収量を得ることも不可能ではなく、現在そ
のコメが外食産業などに使われはじめている。現在の我が国の10アール当たり
の平均収量が500キロと計算すれば、この増収でコメ生産コストは半減するこ
とになる。現在の米価が1俵1万~1万4千円だとしても、現在の農家収益を
確保したうえで1俵5千円から7千円のコメが供給できることになる。これな
らカリフォルニア米などには十分勝てるコストになる。負けることを前提にコ
メ農業を語るべきではない。また、そうした敗北主義を語り続けることがこれ
からの若い農業者たちの勇気をそぐことになるではないか。

8)「食料・農業・農村基本計画」の中に食料自給率を50%に向上させるという
項目が入っていることが産業としての農業発展を阻害している。自給率向上を
目的とした様々な施策があるために産業化と言う目的との政策的整合性が取れ
ないでいるのではないか。自給率向上政策を廃止すべきである。

この他にも私の発言はあったかと思いますが、お時間があれば映像をご覧いた
だければと存じます。3人の政治家と5人の民間評価員の意見は盛田氏(日大
教授)を除けば、微妙な違いはありますが、私の申し上げているのと同じ方向
性にあると感じました。さまざまなお立場でのご意見は私も勉強になりました
ので、お聴きいただければと存じます。

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