国語屋稼業の戯言

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中高生のための内田樹(さま) その22

2018-10-25 09:39:31 | 中高生のための内田樹(さま)
復習問題である。


次の文章を要約しなさい。

教育とビジネスマン

 大学教員は本態的に惰性が強く、変化を好まないので、新学部や新学科の設置や新しい教育プログラムの導入に、あまり積極的ではない。
 これはそれでよいのである。
 教師というのは「そういうもの」だからである。
 教師というのは、「これまで誰もやったことのないすばらしい教育を行おう」というふうにはふつう考えない。
 現状に満足しているからではない。
 そうではなくて、「むかしはうまくいっていたのに、いつのまにすっかり堕落してしまった“教育の黄金時代”にもう一度還らなければならない」と考えるのである。
 教育者は本質的に「黄金時代」を懐古的に志向する。
 私が知る限り、「教える」ことに卓越していたすべての知者がそうである。
 むろん、ビジネスマンはそのようなことを考えない。
 「むかしはうまくいっていた、あの“商いの黄金時代”にもう一度還ろう」というようなことを言う経営者はどこにもいない。
 しかし、大学に30年いてわかったことは、教育については「あらゆる教育プログラムが滑らかに進行し、学生たちの顔が知性と歓喜に輝いていた“教育の黄金時代”をもう一度甦らせよう」というタイプの「物語」が教育者を「やる気」にさせる上でもっとも効果的であるということである。
 大学のような人的資源「だけ」がほとんど唯一の駆動力であるシステムにおいては、「教師のやる気」をどうやって恒常的に高揚させ続けるかということがマネジメントの基本である。
 ところが、大学教育に参入してきた“ビジネスマン”たちの中に、「大学という特殊なシステムにおいて教職員のパフォーマンスを継続的に高止まりさせるにはどうしたらいいのか?」というふうに問いを立てる人間はみごとにひとりもいなかった。
 彼らは「どうやって教職員を脅し上げ、萎縮させ、従順にさせ、馴致させるか」ということばかり考えてきた。
 そうやれば「給料分の仕事はするだろう」と思ったのである。
 たしかに、そうすれば多くの人は「給料分の仕事をする」ようになる。
 けれども、それは同時に「給料分以上の仕事をしていた人々」からフリーハンドを奪うことを意味している。
 教育の現場は「給料分以上の仕事(場合によってはその10倍、20倍分の仕事)をする人々」が一定数恒常的に存在することで保っているということを忘れてもらっては困る。
 そういう人たちがまったく自発的に「給料分の仕事をしない」教職員(もちろん、たくさんいる)の不足分を補う以上のことをしているから教育現場は回ってきているのである。
 ところが、「給料分の仕事を、Job description 通りの仕事をしろ」ということは、オーバーアチーブの機会そのものを奪うことになる。
そのリスクに対してビジネスマインドな人たちはあまりに無自覚である。
 教育上のオーバーアチーブというのは、平たく言えば、「レギュラーな教育活動以外のことを、大学の内外で、公的資源も私的資源もごっちゃにして、管理も統制も受けないで気ままに行う」ことだからである。
 そのようなアナーキーを管理的マインドの勝った経営者は許さない。
 だから、ビジネスマインドで経営される大学では、たしかに大学構成員のあれこれの議を経ることなしに、トップダウンで次々と機構改革が行われ、教育プログラムが刷新されて、すばらしい「ハコ」はできあがるのだが、それにつれて、実際にそれを機能させなければならない教職員たちの「やる気」はどんどん劣化してゆくのである。
 教職員の全員に「給料分の仕事をきちんとさせるシステム」を作ると、教育現場のパフォーマンスは低下する。
 「全員に給料分の仕事をきちんとさせるシステム」は「やりたい人間は給料分以上の仕事をいくらでもできるシステム」とは共存できないからである。
 システム管理の原理において、この両者は氷炭相容れない。
 私たちはどちらかを選ぶしかない。
 そして、凡庸なビジネスマンは決して後者を選ばないのである。












教育とは、ビジネスマインドと相性が悪い。それは教育の現場には給料以上にやる人間がいるので回ってきたからであり、給料以下の働きの人間が出ても、給料以上に働く職員が働きやすいようになっていたからである。一方ビジネスマインドでは給料以下の働きの人間を給料通りに働かせることを目標にするので、教育者を萎縮、従順、馴致させることを中心にすることになる。したがって、給料以上に働く人間もビジネスマインドのシステムに入ることになると、のびのびと仕事ができなくなるのである。




※ 題名に対比があるので、対比を軸にした。ビジネスマインド教育
※ 題名が分かりやすいので、最初に結論を書いて、対比の軸として各々を説明して導入にした。
※ 対比の説明は「一方」「他方」で行った。(二重性の展開。逆説を使っても説明できる)



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