近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
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夏目漱石「それから」卒業論文先行研究史発表

2012-07-09 14:17:27 | Weblog
こんにちは、2年の今井です。
更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

7月2日は夏目漱石「それから」卒業論文の先行研究史発表を行いました。
発表者は藤野先輩、司会は今井でした。


発表のおおまかな流れは同時代評2本を含めた計13本を挙げた後、研究史の主な論点とそれらをうけてご自身が扱いたいと考えている論点を挙げるというものでした。
具体的には、先行史の主な論点は「作中における「自然」という概念について」「作中の語りと代助の関係」「百合などにおける植物の意味」「代助は昔から三千代を愛していたのか」であるとし、ご自身は「代助の無意識と自然の関係について」「語りと代助の関係」「代助の三千代への愛について」とされました。

いただいたご質問は「代助の無意識と自然の関係について」と、特に「代助の三千代への愛について」に集中しました。
発表者の解釈は代助が昔から三千代を好きだったというのは現在の代助による改変であり、昔は恋愛感情としてではなく自分を必要としてくれ、立場を与えてくれる人間として三千代を見ていたというものです。代助は昔よりもみすぼらしい三千代を見て心を動かしていますし、三千代本人にはあくまで「存在に必要」と言っており愛しているとは言っていません。しかし、ここで「そう解釈するなら、代助が三千代に送った指輪はどうするのか」という鋭い指摘がされ、その解釈が今後の課題となりました。

先生方からのご指摘やご指導は、「どういった基準で集めた先行論かよく伝わってこない。量が多いし、卒論ならば自分の論の切り口や意義を明確にするものを選ぶべき」「「自然」という言葉にもっと慎重になった方がいい」「言葉を一つ一つ確認していかないと足元をすくわれる」「指輪と時計、銀杏返しにすぐに触れなかったことを今後見ていけるといい」などでした。
また、作中の語りが代助の内面や過去にまで踏み込んでいることから語り方、比重、視点などのどの変化をもって近いというのか、また語りについての先行研究が多くないためやるなら慎重にやっていかなければいけないとご指導いただきました。


どの作品もそうなのですが読み返せば読み返すほど新たな視点や発見を得られるので、長編を集中して何度も読み通すのは大変かもしれませんが本文をしっかり追っていきたいと思います。夏休み明けに卒業論文の中間発表があるので、それまでには何回か読み返しておきます!


次回は梶井基次郎「路上」の研究発表です。
では、失礼します。