カイロじじいのまゃみゅむゅめも

カイロプラクティック施療で出くわす患者さんとのやり取りのあれこれ。

桐野夏生 『夜また夜の深い夜』 幻冬舎

2017-10-02 21:38:30 | 本日の抜粋
パナマ船籍やリベリア船籍の大型石油タンカーが座礁したなどとの報道を時々目にする。
時々なんだが、先進諸国が保有しているはずの船の数に比べその頻度は多い。
そもそもパナマとかリベリアがそれほどの数の船を持っているとは思われない。
そこにはからくりがある。
欧米諸国の船会社は、自社の船をパナマやリベリアにペーパーカンパニーを作り登録する。
タックスヘブンみたいなものと思えばいい。
税が安い。
乗務員の質を問われない。(一定以上の自国乗務員を必要とする法を免れる)
船舶の安全な航行を目的とした法が守られない以上、事故の多発は必然の成り行きだ。

徳さんたちはリベリアに関してはほとんど情報を知らされていない。また知ろうともしない。

いや、耳を澄ませば、世界はリベリア内戦を非暴力で止めさせた女性たちにノーベル平和賞を送ったのだった。
母親たちが当時の大統領府を取り囲み、ついに暴力を行使することなく内戦を終結させたのだ。
2003年のことだった。
注目すべきは徹底した非暴力と、キリスト教徒とイスラム教徒が互いに手を携えた事である。
死の恐怖を感じながら大統領府を取り囲んだ時、母親たちはキリスト教の聖歌とイスラムの宗教歌を交互にそして相手の宗教の歌を互いに歌ったという。

以下はリベリア難民のエリスの言葉だ。

  ***
「あたしのお祖父さんのお祖父さんは、解放奴隷だったんだ。それで、アメリカからリベリアへ入植したんだよ。リベリアというのは、その名のと通り、解放奴隷のための土地でもあったのさ。首都のモンロビアは、当時のアメリカ大統領だったモンローから付けられたんだ。知ってるかい?知らないだろうさ。もうみんな、世界中の人が忘れている。リベリアは人工的な国だから、もちろん無理があった。アメリカが勝手にアフリカ大陸にそういう国を作ったからだ。その国に元からいた土着の部族のことなんか、全く考えていなかったんだよ。元からいる部族は、アメリカから帰ってきた解放奴隷なんかどうでもいいし、アメリカナイズされていて、偉そうにしているから、気に入らないわけよ。実際、それがリベリアの内戦の原因でもあるんだ。内戦なんて簡単に言うけどさ、あんたたちが考えているような戦争じゃないよ」

「あたしが従軍させられた子供兵の軍隊なんて、みんなラリっているからさ、殺した相手をばらして心臓を食べてたよ。人間を食べれば、特に心臓を食べれたら、強くなれると信じているからだ。そえれだって、きっと宗教上の理由でしょう。アナが言うのも宗教、人間食うのだって宗教だよ。どっちの教義が偉いとか、どっちが劣っているかとか比べようがないんだ。だって、そんなのナンセンスだもの。それにさ、子供兵士が人間を食べるような戦争の原因を作っておいて、その政府を助けるようなマッチポンプなことをしているのはアメリカなんだよ。アメリカだってキリスト教、それもプロテスタントの国だろ?アナ。キリスト教を信じている人が多い国が戦争の原因を作って人間を人間と思わせないような内戦を長引かせたんだ。あたしはそれを知っているから、穴の宗教的な理由なんて認められない。そんな綺麗ごというなよ」
声が詰まったので、エリスの顔を見ると、大きな目に涙がいっぱい溜まっていた。エリスが泣いている。何が起きても笑い飛ばして、憎まれ口を叩く賢いエリスが小さな女の子みたいに泣いている。
  ***



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