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十和田湖の湖底から、67年前の旧陸軍機見つかる

2010-08-23 13:40:00 | 編集長日記
65回目の終戦の日を3日後に控えた8月12日、
緊急の記者会見が都内で開かれました。

その場で伝えられたのは青森県と秋田県に跨る十和田湖の湖底に、
なんと67年前に不時着水、直後に水没したとの記録や証言のある
旧日本陸軍の一式双発高等練習機と思われる機体があるのを確認したというニュースでした。



機体を発見したのは、十和田湖の湖底地形調査と水中植物の音響調査を
共同で行なっていた(株)ウインディーネットワーク海洋調査部と
東京大学生産技術研究所海中工学国際研究センターのチーム。

7月12日から約1ヵ月の予定で実施した音響測深機使っての調査のなかで、
戦時中に墜落したと伝えられる陸軍機の水没地点付近の湖底に
航空機らしき形状を音響画像で発見、
ビデオカメラによる映像から航空機と確認したということでした。



その後、機体の素性について、長年にわたって
十和田湖水没陸軍機の研究・調査を行なっていて著書もある
青森県立三沢航空科学館の大柳繁造館長らに協力を仰ぎ、
昭和18年9月27日に中湖(なかのうみ)に不時着水し、
3名の乗員とともに水没した一式双発高等練習機であるとほぼ断定されたのです。

この事故では1名の乗員が地元の人たちに救助されており、
そうした話しが語り継がれていたことも、機体の素性調査にひと役買ったようでした。
記者会見には青森や秋田からも多くの記者や関係者が出席しており、
地元の関心の高さを感じました。

しかし私が驚いたのは、発見したという事実よりも機体の状態。
腐食がなく全体が非常にきれいで、垂直尾翼のマークや日の丸がハッキリ視認でき、
機体の塗装も残っているほど当時の状態を保っていたことでした。

着水時の損傷が少なく、その後ゆっくり沈んだこと、
水深が300m以上(正確な水深は非公表)で微生物が少ないことがその理由とのこと。
湖底の沈殿物を巻き上げてしまうため、機体の内部や機首付近など
部分的にカメラが近づけない箇所もあったようですが、
動翼の羽布やキャノピーのガラス部分以外はほとんど無傷のようにも見えました。

本誌でもおなじみ、戦史研究家の渡辺洋二氏によれば、
垂直尾翼のマークは当時帯広を主基地とした陸軍飛行第38戦隊のもの。
百式司偵が主装備の部隊で、双練は訓練や連絡などの雑用に使われていたそうです。

また、地元の人間情報紙『夢追人』2010年4月号には当時の十和田湖小学校の日誌からとして、
搭乗員を救助した人々の話しや葬儀の様子が紹介されています。






PHOTO/(株)ウインディーネットワーク


さて、気になるのは今後のことです。
前述のように発見したチームの本来の目的は別にあり、それはすでに終了しています。

もともと地元には、この機体を引き上げて然るべき場所に展示しよう
とする動きがあったのですが、最大の問題はやはり費用。
一般への募金活動に加え、関係組織・団体、あるいは機体メーカーであった
立川飛行機の関係会社へも協力を依頼しているものの、
具体的なところまでは進んでいないようです。
さらに300mを超えると言われる水深での作業は、技術的にも困難なものになるでしょう。
そして、引き上げ後の修復作業も‥‥‥。

国が動き、キチンとした修復と展示が行なわれるのであれば、
私もヒコーキファンとして歓迎したいと思います。
しかし、このままの姿を維持させたいのであれば、
十和田湖の湖底が一番適しているようにも思えるのです。

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2 コメント

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そういえば・・・・ (かつひこ)
2010-08-23 23:09:24
航空機でなくて申し訳ないですけれども、何年か前、富士五湖(たしか、山中湖かと)にて旧帝国陸軍の五式中戦車の車体が発見された、なんてニュースを目にした記憶があります。一時期は引き揚げも、なんて話もあったようですが、何時の間にやらうやむやになってしまいました。今回の件も、このまま湖底にて静かに余生を過ごさせてあげた方が良いかと考えます。何せ、「軍用機」と聞いただけで技術的価値とか歴史的価値そっちのけでヒステリーを起こす人があまりにも多すぎますから。
追伸 (かつひこ)
2010-08-24 13:26:34
今朝の産経朝刊にて、「FX選定 F35に一本化へ 23年度概算要求 7億円計上」という記事がありました。あくまで「調査費」という名目のようですけども、空幕は何を血迷ったのか、というのが正直な感想です。
ただでさえ国内では関連企業が撤退しはじめているというのに、軒並み生産分担が決定していて、しかも実際に取得開始出来るのか、いつになるのか分からない、「海のモノとも山のモノとも分からない」シロモノに大金をはたく事が本当にベターな選択なのか全く理解に苦しみます。

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